人間退化(創作)

人間退化(創作))

シーン1 裕二の職場

パソコンにモニター画面が 見える。花尾裕二はモニター画面をちらちら見ながら もう一台のパソコンでエクセルを見ている

裕二、ちょっと、寺崎さん きて。

勇斗、なんすか?

裕二、これ君がやったんだよね。

勇斗、やったというか、自動処理されたのをまとめた だけだけど

裕二、そういうの困るんだよね。中身ちゃんと見た?

勇斗、え?

裕二、これ、昨年のデータのままだよね。ちゃんと、 確認して。

勇斗、自動化されてるデータだから間違いないと思います

裕二、その自動化のバッチも見て直してからデータにして。バッチも直さないと

勇斗、教わってません。

裕二、教わってなかったら 自分で調べるなりして、わからなかったら俺にきくとか。

勇斗、自分で調べるのめんどいし、時間の無駄です。 聞くとか、この件いわれて ないし。

裕二、寺崎さん、前々から 思ってたけど、自分でもの 考えてる?ごくごく普通の ことだよ。

勇斗、あんま意識したこと ないですね。世の中便利だから悩むこともないし。

裕二、それじゃ社会人やっていけないぞ。

勇斗、いいですよどうでも。もう多分、今夜から世界ががらっとかわる

裕二、なに?

勇斗、あれ?知ってますよね。モノポライズ優子。自分ネット投票したよ。知らないんですか?

裕二、名前だけは知ってるよ。アタマのおかしいやつ。ノーワーク政策っていうやつだろ?

勇斗、いいですか?もう働かなくていいんですよ。明日からそうなるんです。

裕二、そんな世界がくるはずがない。人間は働いてこそ人間だ。

勇斗、これだから昭和の人間は。今は令和、働くというのは時代遅れ

裕二、昭和、令和関係ない。今でさえ、自動化が進んで、世の中ヘンになってるのに。

勇斗、ヘンは今までがヘンだったんだよ。働かなくて暮らしていける。これは人間としての究極の夢ですよ

裕二、やっぱりイカれたやつだ

勇斗、私からしてみると、 あんたのほうがイカれてるよ

裕二、年上に向かってあんたはないだろう!

勇斗、年なんて関係ない。 時代にとりのこされたおじいさん

裕二、もうええ。はなしたくない

勇斗、私、今日でやめますんで。私だけじゃなく、日本人の大半ね。

裕二、開票が楽しみだな。

勇斗、ではさようなら。永遠に。

裕二、ふんっ。

裕二は仕事に戻る。勇斗は 部屋を出る

裕二、おい!まだ今日は終わってないぞ!ったく。

シーン2 裕二の自宅

裕二は冷蔵庫をあけて、牛乳をとる。居間で作業やっている愛理が話しかける

愛理、珍しいわね、いつも ウイスキーなのに牛乳なんて

裕二、お前も飲むか?牛乳

愛理、そうだわね。いただこうかしら。雫、いいかげんYou Tube見てないで勉強しなさい

雫、これ見終わってから。

愛理、まったく!

裕二はグラスに牛乳を二杯 つぐと愛理に渡す

裕二、なあ、愛理。うちの 職場に仕事できないやついたろ

愛理、勇斗だっけ。云われたことしかできなくて、悪びれない生意気な人

裕二、今日辞めたよ。

愛理、辞めたの?

裕二、いや、実際にはまだ。辞めることをいっただけだ。離任処理がまだだから。

愛理、やる気がない人は辞めてもらっていいんじゃない?いても邪魔だし。

裕二、仕事しなくてもよくなる、なんだっけ?

雫、モノポライズ優子!

裕二、そうそう、あれを信じきっていて

愛理、あんな非現実的な政策、うけるわけないじゃない。

裕二、だよな。今の若い層に人気あるみたいだが。

愛理、おかしいひとはいるわね

裕二、でも、最近思うんだよね、うちに入ってくる若い連中は自分でもの考えないというか。

愛理、頭つかわない。

裕二、そうそう、それって 若者のせいじゃなくて、この世の中のせいだと思ってるんだ。

愛理、今なんでも自動化して楽にはなったよね。紙で 文字かかなくなったし。

裕二、便利になった分なにか人間が壊れてきている気がする

愛理、そうね、今、モノかうでも全部ネットショッピングだし。本屋とかも実店舗おいてないし。

裕二、昔は便利じゃない分知恵をもちよって楽しかったな。ファミコンはあったけど、あのくらいがよかった。

愛理、そうだよね

雫、ねえねえ、昔話はいいから。モノポライズ優子、 当選しないかな?そしたら 勉強しなくていいし。

裕二、雫も心配なんだよな あの男に似ていて

雫、ん?心配?そんなことないよ。今の学生みんな同じこと思ってるよ。

愛理、You Tube見終わった のなら勉強しなさい

雫、いやだ。あと少しで世界が変わるんだから、あと 15分で当選者がきまる

。 裕二、残念ながら世界は変わらないよ。我々の世代が そんなの黙ってない。

雫、まあまあ、そういわず、モノポライズ優子の動画見てみなよ。5分もいらないから。なんと、一ヶ月で 80億回再生なんだから。

雫はスマホを裕二に渡す。

裕二、よしどれだけクレージーかみてはやる。ただ、 落選したら、一日、6時間は 勉強な

裕二はYou Tubeを見る

優子、私は長々しゃべらない。みんな仕事好きかい? 嫌いだろう?やめちまえそんなもん。ノーワーク党の 優子が当選したら、仕事したくないやつは、一ヶ月あたり5万納税するだけで、 仕事なんて週1回でよくなる。お金なんてもってるやつはもってんの。特に議員ね。私が当選したら、議員は5人だけにする。居眠りしている議員に何千万とあんたたちは払ってきたの。無駄。食費がかかる?月5万納税したら、弁当無料支給制度作る、ライフライン?電波?すべてフリー。住宅費?国営化してそれもフリーだ。親の介護?やめちまえそんなもん。全部自動化。施設フリー。あとあと もめなくて一番いい。 学生?勉強なんてしたいか?やめちまえそんなもん。なんで勉強する?いい大学いって、大手の会社に就職するため?仕事しなくていいんだよ?無駄、大学、高校は廃業。義務教育撤廃。旅行?国内旅行なら 年に2回、旅行券発行する。 これら月5万の納税だけで、 実現できる。私ならできる。私に投票したら皆、楽園生活が待っている。楽しみにしてくれ。じゃあな。

裕二、クレージーだ。これをほんとに信じるやつなんているんか?

愛理、カルト宗教みたいな 感じね。

雫はスマホを裕二から奪い取る

裕二、おい!

雫、もうすぐ結果が出る

裕二、だからこんなのは当選しない。

雫のスマホが通知音なる

雫、やったあ!!当選した!勉強さよなら!

裕二、ナニ?!

愛理、そんなことあんの?

雫、ね!あ?生配信するよ みんなでみよう。

優子、はい。皆さん賢い。 私が総理になったからには 大胆に変えていきますよ。 しかも明日から。あたいは その為に半年前から下ごしらえしたのだから。まず、 東京から。まず、ノーワークバーコードの配布。この 生配信が終わったら、普通のアーカイブ配信になるから、希望者はそこにリンクタップして、名前と年齢と 顔写真とマイナンバーを記載して送ればバーコードが 配付されます。15歳から希望すればOK。それから、都立、区立の高校、中学、小学校は閉鎖。明日からいかなくてよい。いかないでちょーだい。あとあんたらに 直接関係ないが議員制度、 撤廃。あたしに投票した議員は退職金でるが、それ以外はびたいちもんやらん。 野党はどーでもいいが、国の金は配付しない。詳しい取り決めは、たくさん資料 置いたのでみておいてちょーだい。あたしはながなが 話しはしない。じゃあね。

裕二、大変なことになった

雫、なんで?願ったり叶ったりじゃん。やったー。 明日から学校いかなくていい。

愛理、一時的なものかもしれないから勉強はしてちょうだい

雫、無駄じゃん。やらないよ。

裕二、頼むから勉強はしてくれ。こんなの長くは続かない

雫、じゃあ、少し勉強して あげるから、ノーワークバーコード手にいれていい?

裕二、ダメダメ

雫、国の政策だよ?

裕二、とにかくダメだ!

雫、じゃあ、あたしこの家でる。

愛理、それはもっとダメ。

雫、国に従わないなんておかしい!

裕二、こんな政策は一ヶ月ともたん。

雫、ノーワーク認めるの? 認めないの?

裕二、ただではない。月5万納税しなきゃならん。

雫はスマホをみて、資料を みる。

雫、3ヶ月滞納したら、無効になると書いてある

裕二、ほら。そうだろ?

雫、で認めんの?認めないの?

愛理、認めないとどうするの?

雫、住まい、ライフライン ネットし放題、弁当付きで 月5万ならひとりぐらしする

愛理、どうする、とおさん

裕二、んん。3ヶ月未納で 無効だろ。まあ、そんなに この政策は続かないから、 3ヶ月限定で許す。それ以上は、また考える。勉強は するように

雫、うざいな。まあ、いいや。とりあえず、発行したから。とうさん、かあさん はどうする?

愛理、あたしは今のところ いいわ。

裕二、ただじゃない。3人なら月15万だ。そこそこ働かんといかん。

雫は喜んでいる。裕二と愛理はため息をつく。

シーン3  職場

裕二はパソコンを見ている 上司が近づく

裕二、酒井GM。

酒井、花尾君、ちょっと話いい?

裕二、はい。

酒井、あれ、勇斗くんは?

裕二、さあ?働きたくないといっていたから、なんとか優子で歓喜して、ノーワークなんとかゲットして、 もう来ないつもりでしょう

酒井、そうか。まあ、その 優子政策のことだかな。

裕二、はい

酒井、政府であまり働くなとお達しがあってね。これから週3勤務になる。

裕二、収入は?

酒井、残念だが、4割カットになる。

裕二、そんな。。

酒井、まあ、花尾くんの家族は3人だから、きみだけ働いて、2人分の出費は、 10万だからなんとかやって いけるだろう。

裕二、何故、こんなめちゃくちゃな日本に

酒井、若い有権者の投票率は98%だったらしい。若い人は働きたくないらしい。

裕二、絶対こんなの崩壊する

酒井、今は国の方針に従わないといけない。それで、 会社としても午前中会議して、この事務所のとりこわしが決まった。

裕二、とりこわし?うちの 会社どうなるんですか?

酒井、ビルを売れば、その 分、うちらに給料分配できる。

酒井は持っていたノートパソコンを渡す。

裕二、これからはどこで。

酒井、それが答えだ。まあ、コロナの時代にやってた在宅勤務の復活、

裕二、在宅勤務か

酒井、ただあの頃と違うのは、あの頃は週2出勤、週3 在宅だったが。今回は、在宅勤務のみ週3だ。

裕二、そうですか。

酒井、実際、勇斗くんのようにもう働きたくない若者の調査をした。まだ、全員からの返答はないが、社員は6割減る見通しだ。

裕二、そうなんですか。

酒井は裕二の肩たたく

酒井、まあ、これも時代かな

裕二、世も末ですよ

酒井、まあ、長くは続かないだろ、この政策。

裕二、そうだといいんですね。

シーン4 裕二の自宅

愛理が牛乳飲んでいる。 ため息をつく。裕二が玄関を開けて居間にいく。

裕二、どうした浮かない顔して。まあ、そういう自分も悪い話しがあるが。

愛理、じゃあ、私からいうね。私、来週いっぱいで、 今の職場くびなの。保育園勤務だから関係ないと思ったら、11月中旬から、保育園全自動化になるの

裕二、そうか。思ったより 今回の政権、動きが早いな

愛理、あたしも関係ないと 思ってた

裕二、お昼の配膳なんかの 自動化はわかるが、お昼寝とかどうなる?子供はだまってないで騒いで大変だぞ。

愛理、このモノポライズ優子って人、半年前からもの すごいいろんなとこに出資してて、園児に、眠たくなる超音波を流すらしい。それがロボットがすべてやる

裕二、健康に害はないのか ?こわい世界だ。

愛理、それよりあたし失業するのよ。

裕二、実は自分はクビじゃないが、在宅勤務の週3勤務になって、給料4割カットだ。

愛理、そうなの?家計どうすんの?

裕二、愛理も見つからないなら、ノーワーク申請するしかない。

愛理、結構、強引な政策ね。仕方ないわ。

裕二、あーあ。だ。いざ、 若い世代が選挙参加したら めちゃくちゃになったというね。

愛理、そうそう、今日、スーパーいったら、野菜や 魚、肉、調味料がすべてきえて、すべて弁当になってた

裕二、料理もできないってか?料理を作るというのも 楽しみだと思うのだが。

愛理、おかしな日本になってきたわ

裕二、便利になっているようで人間退化してる。

愛理、そうね。

裕二、雫はどうしてる。

愛理、部屋にこもって、なんだか嬉しそう

裕二、うちらがおかしいのか、若い世代がおかしくなっているのか

愛理、幸せってなんだろう

裕二はため息をつく

シーン5 5ヶ月後、裕二の家

裕二は自室でパソコンをいじっている ラジオから男性の声がする

声:またもや強盗事件です。先月から急増している強盗事件。 今月は先月比から1.8倍で全国で6297件。動機はノーワーク政策の月5万円納税 を得るためといものがほとんどです。皆さん、外出時はできるだけ現金もたないよう おきをつけください

裕二、治安が悪くなってきたな。

愛理がスマホもって、あわてて裕二の部屋に入ってくる

愛理、大変よ、あなたのおばあちゃん亡くなったわ

裕二、亡くなった。大変だ。葬式しないと。。たが、なんで死んでから

雫がだるそうに裕二の部屋に入る

雫、おばあちゃん、しんじゃったの?もう78だっけ? いい年だからな。

裕二、雫!他人事だな!

雫、まあ、今のおばあちゃんの世代はかわいそうだね 。うちらの世代は多分、不老不死になるよ。

愛理、身内が死んだっていうのに!

雫、まあ悲しいことは悲しいけど。

裕二、そんなことより、いろいろやることあるぞ。愛理、喪服の用意を

愛理、それがね。

裕二、急いで

愛理、今、病院に聞いて、 葬式会社に連絡したんだけど。

裕二、どうした?

愛理、もう機械で、自動化されて、壺に納骨されて、 明日、壺がうちにくるらしいわ。

裕二、なんだそりゃ!それが今の常識っていうのか! 死に目に会えず、骨だけと どくというのか!

愛理、自動化でそうなった みたいよ。

裕二、おかしい!絶対におかしい!

雫、悲しいけど合理的だよね。壺が届いたら拝みはするよ

裕二、雫!お前な!

雫のスマホがなる。

雫、あっ、モノポライズ優子さまから、緊急生配信だ

優子、緊急事態宣言。緊急事態宣言。3日前、エリリンという、未知のウイルスが ある亡くなった人から検出されました。数年前のコロナとは違い、感染者が息を 吐くだけで、他の人に感染する未知のウイルスだ。致死率60%。非常に危険です。我々は緊急チームを作りワクチンを作成したが、 ワクチンの配合は一日、10 万人分しか作れず、ひとり 一千万万払えば優先的に配付する。

裕二、ひとり一千万だと?

愛理、未知のウイルス?

雫、あたしまだ死にたくない。3000万もってるでしょ?お父さん払って。

裕二、働くひとがいなくなったから、知恵も足りないんだ!

雫、そんなのコンピュータがやったほうが早いけど、 早く払って、ワクチンもらってきて。

裕二、3000万なんてもってないぞ!いいとこ2000万だ

雫、じゃ、あたしとおかあさんの分は確保。

裕二、俺は死んでもいいのか?

どうする?日本、こんな未来でいいのか?

end.

 

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