この街のどこかで(短編小説作BON)

短編小説

この街のどこかで(短編小説作BON)

この街のどこかで

真帆は居間でスマホ見ている 賢治がパジャマ姿で紅茶を もっている。

賢治、何見てるの?

真帆、な、なんでもないよ。

賢治、平松愛理をゆるーく応援したいすべての人へ。

真帆、なに覗き見してんのよ

賢治、すまん、すまん。紅茶飲む?

真帆、ありがとう

賢治、平松愛理。部屋とYシャツと私のひとか。懐かしいな、学生の頃聞いた。

真帆、そ、そうだね。

賢治、あれ?真帆。ファンだったっけ?

真帆、た、たまたま見てただけ。

賢治、へーたまたまでファンサイトか。

真帆、あっちへいってよ!勝手に覗き見して。

賢治、平松愛理かあ。大学の 頃、苦い思い出あってね

真帆、そうなの?今まで聞いたことないよ?

賢治、話す気になれなくてね。ほんとは墓場までもって いくつもりでいたけど。

真帆、どんな話?

賢治、噂があってね。俺のことが好きっていう。その子は 物静かで、内気な感じの。最初は受け流してたけど、周りがはやしたてるから、その気になっちゃってね。ちょうど バレンタインも近かったので その気になっちゃってね。

真帆、その子はあんたのこと 好きだったの?

賢治、いや、親友的な。結局、バレンタインもらえなくて、落ち込んでね。でも内気だから渡せなかったのではないかと、思い込んで次の日、 告白したんだ。

真帆、へー。自意識過剰。

賢治、告白した途端なにも言わず逃げてしまって。一週間後にテープが届いて。聞くと最上級I LIKE YOUだったというね。平松愛理の。

真帆、あーなるほど。

賢治、今、こうやって真帆と 一緒になって15年。たまに思い出すことがあるんだよね

真帆、あんたもしかして浮気

賢治、気にはなるけど、会いたくはないよな。気になって SNSで探すけどいなくて。

真帆、だからあたしもSNSやらないの!見つかるの嫌だから!

賢治、え?それって。

真帆、なんでもない!

賢治、あれ?何故、こんな話。あれ、ファンサイトは。 何故?

真帆、私も聴いてた時期はあったの!

賢治、もしかして俺みたいな エピソードある?

真帆、あっても教えない!

賢治、フェアじゃないなあ。 とりあえず紅茶飲んで

真帆、ライン以外絶対やらないんだから!

賢治、墓場にもっていくのね

真帆、その話終わり!

賢治、ははは

------ この街のどこかで 平松愛理

君なしじゃただの街
そんなこと言っていたっけ
忘れかけてた
一歩ずづゆっくりと
胸の隅しまった記憶
よみがえるの

この本屋通りすぎたら
いつもあなたがいなくなり捜した
そしてここから店をのぞく
あのくせ今日もまた
知らずくりかえすの

* それぞれの人生
もう待つ人がいて
どんなに幸せだとしても
時に迷って 時に悩んで
自分を確かめたい日もある
お互いあの恋は
必死に守ったね
愛とは言えなかったけど
あなたどうなの?ふと思い出す?
この街のどこかで

今 日の様に陽がだいぶ
短くなったあのベンチで
ケンカをしたね
理由さえ失くすほど
難しい長話で
風邪をひいた

熱が出たと電話したら
二つもつぶれた目玉焼きサンキュー
今は愛する人に作る
卵失敗したら
その日は風邪をひく

あれからの道のり
充分過去になっていつからかあなたと同じ
名前呼ばれても振り向かなくなり
いつからか人混みの中
あなたの面影と
歩かなくなったの

* 今頃きっとくしゃみしてるね
この街のどこかで
毎日満たされていても
時に迷って 時に悩んで
自分を確かめたい場所がある
笑顔でもう一度
会いたくはないよね
あの日はここで終わったの
全てのものが始まりだった
この街のあの頃

い つからかあなたと同じ
名前呼ばれても振り向かなくなり
いつからか人混みの中
あなたの面影と
歩かなくなったの

* 今頃きっとくしゃみしてるね
この街のどこかで


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