屋根のない恋 (短編小説作BON)

短編小説

屋根のない恋 (短編小説作BON)

屋根のない恋

古ぼけた屋根から、雨水が滝のように流れている。 いればいるほど、豪雨になっていくようだ。すでに由美の スカートの裾はびじょびじょだった。2月ってこんなに寒かったっけ。 由美はバックからスマートフォンを取り出す。19時56分を指している。 「8時になったら帰ろう。それ以上待っていたらここで徹夜になる。」 由美はそうつぶやいた。由美は昨日、キャンパスで卓との会話を思い出していた 確かに卓は、今日は授業は午前中だけで午後は部活もなくすぐ帰宅すると いっていた。今でもその言葉を信じている。信じていたつもりだった。 卓とのLINEのやりとりを見る。昨日までのたわいない会話と。 今日、由美が朝8時56分に送ったメッセージ。 メッセージはこう書いてある 「今日、渡したいものがあるから、17時に卓の自宅のすぐ前の 総合レクリエーション公園前の汽車の前のベンチ前まで来て」 そのメッセージには既読がついていた。・・・急な用事かもしれない。 裏もとっておいた。親友の英子だ。15時20分。 由美は英子のLINEを見る。「今、東陽町。東陽町まで卓と一緒だったから 少なくとも16時には卓は自宅に着くはず。」 「ありがとう」由美が打ったのは15時24分。ちょうど、由美が この場所に着いた時間だ。少し早いけど、早く来てくれるかもしれないと思って。 由美は料理は得意じゃない。だから買った。ゴディバのチョコレートを。 5000円は痛い出費だったが、手作りが上手じゃない由美の本気だった。 雨が降り出したのは18時頃だった。ちょうど由美の気持ちが沈んでいくのと同じ頃。 普通ならば、LINEの返信ならば、一瞬だ。 よく既読になっていて、すぐ返事なくて怒るのはダメだと、そんな話を聞いた。 だから、由美は我慢して待った。でも返信はこない。今日だけはすぐ返信欲しかった。 いや、こんな気持ちになるくらいなら、既読機能なんてほしくなかったのに。 長い髪が顔にまとわりつく。もう、雨なのだか由美の涙なのだかわからずにいた。 しばらく、スマートフォンを見つめた。無情にもスマートフォンは20:00と表示される。 ・・もう帰ろう。おなかすいたな。 「自分チョコか・・。」 由美は鞄からプレゼントを取り出して。びりびりやぶりはじめた。 そして中のチョコを1つ口に入れる。 なんともいえない味。どう表現したらいいものか。 傘ささずいってみよう。傘なんてないけど。 由美は豪雨のなかゆっくりと歩きはじめる。

屋根のない恋-平松愛理

このまま歩いてみよう屋根のない恋だから
傘ささず行ってみようきっと晴れてる場所まで

あなたの気持ち疑うなんて誰より
私が信じられないことだった
その心全部が向いてはないと知って
退くことのできる恋ならば
そんなのほんとの恋じゃない AH

ただただ傷つくだけの屋根のない恋だけど
どこまでも行ってみよう何があっても好きだから

雨やどりの雨はこ の町のどこより
なぜこの胸ただいて刻んでゆく
気がつけばいつからこうしているんだろう
ちょっとした言葉の切れ端で
ふとした仕草のひとコマで AH

どしゃぶりひとり往く様な屋根のない恋だから
雨のまま風のままに太陽を信じながら

このまま歩いてみよう屋根のない恋だから
傘ささずいってみようきっと晴れてる明日へ

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