待ってもいいよ(短編小説 作BON)
短編小説
待ってもいいよ(短編小説 作BON)
待ってもいいよ
狭い空間にパソコンが4台となりあわせに並んでいる。瑞希は、マウスを動かし、
自分の動画を再生する。よし、と小声でいい机にある缶コーヒーを飲み干す。
机においてある、スマホが振動する。
瑞希はスマホをみる。涼介からのラインである。
瑞希はラインを読む。
今日、夜暇?俺と表参道歩かない?いつ帰ってくるかわからない人のことは忘れてさ。
瑞希はため息をついて、ささっと、返信する。
今日、残業。瑞希はちょっと荒くスマホを机においた。瑞希は動画を眺める。いや、もう頭の中は、
仕事のことを考えてはいなかった。隆二のことで頭がいっぱいになっていた。
恐る恐る、今一度、瑞希はスマホを手にとる。
そして、下方にスクロールした。隆二のところで手がとまる。
日付は2016年12月15日となっている、もう1年連絡しあっていない。
隆二との会話履歴を読む。そう思いだした。彼の気持ちを確かめる為に、
敢えて自分からラインをしないでいたことを。
いつ帰ってくるかわからない人のことは忘れてさ。亮介のこのLINEで気づいた。
気持ちが鮮明に戻ってきた。
社長の江崎幸助が、部屋に入ってくるなり、瑞希に話かける。
どう仕上がった?。冬なのに、ラフな姿で珍しい社長だ。
瑞希は慌てて、スマホを置く。「あ、できてます」
「見せて」社長はいうと、再生されていた、動画をもう一度最初から流す。
「・・・・・ん。悪くないね。さすが瑞希さんは仕事も早いしセンスもいい。
これだったらお客さんに満足してもらえるだろう」
瑞希は微笑んで、「ありがとうございます」と、気分を隠す。
時計は15時を回っていた。江崎幸助は腕時計を見る。
今日はもういいだろう。え?と瑞希は社長を見る。
最近、残業続きだったろう。うちは成果物裁量性を重んじる。
今日はもう、かえっていいよ。あ、給料は普通に出すから気にしなくていいよ。
私は今日、これをお客様に納品しにいく。
え?今日、もう帰っていいんですか?
瑞希は心の中で喜んでいた。もう気分は仕事ところじゃない。
帰っていい?という言葉を聞いて、となりの部屋から、男が入ってきた
俺もかえっていいの?社長。社長の表情は変わる。
聞こえなかったか?うちは成果物裁量性だ。田中さんは自分の納品分は
終わったのか?田中さんはちぇっといって別の部屋に戻る。
瑞希は帰る支度が整って、待っていた。
納品物のデータはメモリーステックに入れておきました。
そういって、瑞希は江崎幸助に渡す。
じゃ、かえっていいよ。お疲れ様。うちは5人しかいないからな。
こういうことができるのは小さい会社だけだよ。
瑞希は軽く会釈して部屋をでる。
ビルを出て、瑞希は自動販売機で缶コーヒーを買う。
今はやりの、コーヒーペットボトルは目もくれず。瑞希のスタイルは
変わらない。そして、左手に缶コーヒーを持つ。何故かこの癖がいつのまにか
身についてしまったようだ。そう、これは隆二のくせであった。
瑞希は鞄を左肩にかける。そして右手で、先ほどの隆二のラインを
見つめていた。書こう。
瑞希は一度、缶コーヒーを左ポケットに入れて、隆二にメッセージを送る。
「渋谷にいつ帰ってこれますか?」
すぐに返信は来ないだろう。だって隆二は外国にいるのだから。
瑞希はスマホをしまい、缶コーヒーを左手に持って、歩き出す。
風が強い日だった。目の前で、コンビニのビニール袋が空中で
くるくる舞っている。そう、まるで、それは私の状態。
仕方ない状態のなか、自分が空中で振り回されている。
自分ではどうしようもない、この状態。
瑞希は歩きながら、1年前、最後に隆二に会ったときに言われた言葉を
思い出していた。「会社の命令で俺はアジアを回ることになったけど、
必ず、渋谷に戻ってくる。この任務は誰もやりたがらないから、報酬はいいんだ。
必ず戻る。資金貯めて戻ってくる。帰ってきたら、俺はその会社を辞めて
お前と結婚して、お前と会社おこそう。そうお前が好きな動画制作の会社さ
それまで、瑞希は今の会社で腕を磨いてくれ」
「・・・いつ戻ってくるの」
「2年だ。2年間の辛抱だ」
あれから1年経った。あと、1年のはず。私は敢えて彼の言葉を信じ
弱音はかずに、LINEを送らずにいた。わからない。外国で、いい人と
暮らしているかもしれない。そんな気持ちが走って
たった今、ラインを送った。
109が見えてきたところで、瑞希は、あることを思いついた。
予定のない帰り道、彼と過ごした思い出場所めぐりにいって自分の気持ち
を確かめること。そして、彼の好物だった、渋谷のたこ焼き店で、たこ焼きを
買って、まずは、隆二とよくいった代々木公園に行くことに決めた。
公園では、親子ずれや若いカップルでにぎわっていた。瑞希はベンチを見つけ
先ほど買った、たこ焼きを食べながら、人間観察をした。
そうそう、このベンチだった。隆二がここで人間観察をしようってボーと眺めて
たこ焼きをたべたっけ。春のあたたかい日だった。
ふと、カップルが自転車に乗って追っかけっこしている。
あたしたちもやったなと思って見つめていると、なぜか涙が流れてきた
瑞希は秋に渋谷の東急ハンズで買い物して、彼が荷物もってくれたことのことを
思い出していた。また、瑞希は渋谷に戻り、今度は東急ハンズへと向かう。
あの時は家に観葉植物を飾ろうという目的で、木材用具を買ったっけ。
瑞希はその売り場へと向かう。そこにはまだ同じ木材が置いてあった。
ただ違うのは隆二がいないということだけ。
外が暗くなっていた。ちょっと寒い、瑞希はマフラーを巻いた。
瑞希は隆二と夏に神宮で花火見た日のことを想いだして、表参道から
あの日のように、神宮まで歩いた。あの日は二人とも、浴衣来てた。
今は12月、表参道はイルミネーションが街を輝かせていた。
心の中で瑞希は花火を見た。
いろいろ見て歩くうち、いつの間にか渋谷の街は0時を回っていた。
そこは空き缶とギターの国、路上で歌う、シンガーを2人で眺めていたっけ。
ふと、隆二がそこにいた気がした。でもいない。いないんだよ。
まだ涙が流れてきた。渋谷の街は雪で包まれていた。
自分の気持ちを確かめる為に、隆二と過ごした季節を回って気づいた。
まだ、あたしの中にはあなたがいることを。
もう帰ろうと、スマホを見た。
隆二からの返信があった。
「あと1年。1年で必ず、渋谷に戻ってくる」
瑞希は涙を流して、返信をうった。
「待ってもいいよ。」
<待ってもいいよ><平松愛理>
予定のない帰り道 雑踏から空みたら
星があなたより近くにあった
缶コーヒー左手に もつこのくせ
うつったまま
それが唯一 あなたがいた証拠
路上の駄菓子の 袋が風に
逆らえず 舞うのを見てる
ねえねえ あなたから
私はいなくなったんだね
だけどまだ私にあなたは ずっといるよ
あと一回ずつなら待ってもいいよ
夏の花火と 春の雷と 秋の北風と 雪
午前零時の渋谷は 空き缶とギターの国
駅降りてそこはアジアのどこか
後姿があなたに 似てる胸を抱いた夜
翌朝私をやめたくなった
あなたを好きで いようとするほど
自分を嫌いになってく
そうね 待つことを
やめれれば楽になれるのに
ひとりぼっちもこんなにさびしくないはず
あと1回ずつなら待ってもいいよ
夏の祭りと 春の公園と
秋の夕暮れと 雪
あの大きい手を 握ればどんな
人混みも まっすぐいけた
なんど ぶつかっても
自分の足で歩きたいよ
これからは好きなことをもっと
好きになる
でも1回ずつなら待ってもいいよ
夏の夕立と 春の霧雨と
秋の枯れ葉と 雪