NEW バレンタインズデー

BON作

平松愛理

NEW バレンタインズデー

平松愛理

幸せの白いTシャツ(短編小説:BON)

ではこれにてチームは解散します。 グループラインは削除はしませんが 私からの発信はよほどなことがない限りしません。お疲れ様でした。

ーみいちゃん今迄お疲れ様でした。お世話になりました。 またさ、落ち着いたらなんかやろーよ。 今度はお金をあまり使わないでさ。楽しいことやろう。

ーうん。 ありがとう。美里。ではzoomきります。ありがとうございました。 みいはパソコンをいじる。 4度めの挫折か。つくづくあたしの 人生って。あっ、クミから?

みい、ちょうどzoom終わったとこよ。

くみ、ああ、終わったのね。

みい、あたしさ、つくづくダメな人生だよね。失敗ばかり。

くみ、みいはよくやったよ。

みい、慰めなんて意味ない。動画事業失敗して。失敗するとわかってたら あんなにお金使わなかったのに。派遣生活から抜け出してずっとテレワークして 好きなことして稼ぐはずだったのに。派遣やめられない。 あまり得意じゃない仕事をみじめな想いしながらやらなきゃいけない。 娘も受験生でこれからお金いるのに。いろいろ狂った。

くみ、トライしたことに意味はあるよ

みい、成功しないトライは無駄。400万使わなかったらいろいろもう ちょっといい生活になってるはず

くみ、まあ成果物は残ったんだから、それをもとに将来チャンスくるかもよ

みい、くみ、あの占いの人と同じこというのね。 じゃあそのチャンスはいつくるの?1年後、2年後? あの成果物が1000万、1億に化けたりする?適当なことはいわないで。 所詮自分のことじゃないからそんなこといえるのよ。

くみ、幸せの白いTシャツ、覚えてる?

みい、平松愛理の曲?

くみ、幸せになりたい、幸せほしいと、幸せ願うより先、不幸をなげいていた

みい、幸せになりたいじゃない!

くみ、幸せってね、幸せな部分を忘れるのよ。みいは幸せだよ。

みい、幸せじゃない。

くみ、みいは結婚して子供生まれたよね。20年前は結婚して 子供産みたいいってたよね。それは叶ったよね。 旦那さんもいい人で穏やかなひとでよそみしないよね。すごく いいよね。幸せだよね

みい、そんなに幸せじゃない!特に仕事運がない!

くみ、あたしは独身でここまできちゃった。家庭持てる幸せを掴めなかった

みい、そうだけど。少なくとも幸せとは感じてない!

くみ、幸せってね。叶っちゃうと、 ただの現実になっちゃうから、幸せを感じ続けることはできないんだよね、 逆に失うことはイメージできない?旦那さん、女つくって 消えたら、

みい、あいつはそんなにもてない! あいつはもう49だし!

くみ、叶っちゃうと、幸せは空気になるのよ。0じゃないのよ、 旦那さんが蒸発して、当然の幸せ失うの

みい、確かに考えてもいなかった

くみ、確かに今回は失敗したかも しれないけどトライはできたんだよね?不幸というなら、 それで愛想つかされて離婚になったときが 本当の不幸よ。まだみいは大丈夫。

みい、いってることはわかるけど。 私は自由に仕事がしたいの。

くみ、みいはね、テレワークが好きみたいだから、フルリモートか 半分リモートの派遣やるといいよ。なんだかんだ、 去年、テレワークやりながら夢追ってたの幸せそうだったよ

みい、欲張りなのかな。。、あたし

くみ、幸せを捜せることが ただ嬉しかった日々 そうか。だから信じてこれたんだ・・・ 心・他人・明日

みい、そうか、この曲はそういう 気持ちなのか!はじめて芯にはいってきた!

くみ、多分、失敗したことより、400万無駄に してしまったことのほうが気持ちいってるのかな。でも 金は天下のまわりもんで、たとえ、 400万あったにしても。他で変なことに使ってたりしちゃってるかも。 うちの親82だけど。千葉の奥地に 墓たてちゃって、墓は必ずいるから 若いうちに買っておいて、あとで 苦しまないようにしようって。何百万貯めて、使って。 それがいまどうよ。時代変わって、墓地じゃなくて 都内の建物の中でボタン押して、墓でる。それも30万だせばそこそこ いいレベル。都内だし安いし管理しやすいし、 わざわざ普段いかない田舎いって墓参りの時代じゃないから、 今になって変えようと思ったら撤去代もかなりかかる。 賢い選択したつもりが。これよ。だからね、動画で使った400万。 家庭壊さすにトライして成果物残ったなら、いいじゃない。それは宝物だよ。

みい、なんかうまくいいくめこまれた、まあ金あっても 他で使っていたかも。あたし貯金できるひとじゃないしな

くみ、大事なのはそのあとの気持ちと姿勢よ。平松さんはこの曲の 締めくくりでこう歌っているわ。 たどりつかないことが 本当の幸せの繰り返しかも

みい、いや、たどりつきたいな。

くみ、さっきもいったけど夢は叶うとただの現実に変わって、幸せが 空気になって。感じなくなって、次の夢が生まれるのよ。みいがそのように

みい、いやあ、平松さん天才!

くみ、あたしらからしてみたからさ、平松さんってさ、 確かにいろいろ病気してコロナにもなって、きついけど、 部屋Yでいまだに印税入ってくると思うの。正直金には困ってない。 だけど、あの取材ユーチューブでいってたように、 また歌いたいいうてたね。あたしは独身だから、まだ稼がないいけない。 でも一発当ててたらとっとと仕事辞めて、 つつましくだらだら遊んで暮らしたい。私はそちらになる

みい、あたしも

くみ、平松さん、新曲だして、ファンにあいたいゆうてたね。 平松さんの幸せはたどりつかないし、それが本当の幸せの繰り返しなんだと思う。

みい、あれ、なんの話してたんだっけ?

くみ、だからみいも幸せってこと!

みい、まあいっか。くよくよするのめんどくなった!

くみ、あたし、占いの人より役にたったかも!鑑定料1万

みい、600円のワインでいい?

くみ、ふふ

幸せの白いTシャツ

新しい服たたんで引き出し
閉めようとしたら止まった
昔よく着たHanesのTシャツ
後で引っ掛かっている

上京する日このシャツ詰め込んだ
ビニールの安いバックの
においを思い出した
袖を通してみよう
あの頃の私に会えるかな
幸せになりたい 幸せ欲しいと
幸せを捜せることが
ただ嬉しかった日々
そうか。だから信じてこれたんだ・・・ 
心・他人・明日

綿のトンネルくぐったら現在
机のはち植えが見えた
5分だけいた過去が
今日の沈んだ気分を変えた Ru Ru Ru

幸か不幸かそれは要するに
この心次第なんだね
シャツを脱ぎ着するような
簡単な境界線は転がっている

雨の日続くと太陽に焦がれ
乾く夏ひと雨と願う
人はないものねだり
辛いのは幸せの
ちょっとした裏返しなんだね
幸せになりたい 幸せ欲しいと
幸せ捜すより先
不幸を嘆いていた
そうか。だから見失ったんだ・・ 
未来・自分・希望

どんよりした空 真っ赤なコートで
ただ今日は歩いてみよう
たどりつかないことが
本当の幸せの繰り返しかも Ru Ru Ru

平松愛理

Endless Moment(短編小説:BON)

美咲、寄ってく

絵里、そうだね

二人はコンビニに入る

美咲、サンドイッチにしようかな。

絵里、あたしちょっと手あらってくる

美咲、了解。終わったら外で 待ってるね。  

絵里は化粧室に向かう

絵里、。。ぼやけた顔。

絵里は小さなバックから化粧水をかけて、少量顔にかける そしてリップクリームをとりだし唇に塗って店に戻る。

絵里、。。タバスコ、んん、 久はもういないの。

絵里は手にとってしばらく、 タバスコの瓶を眺める。

絵里、もう忘れないとな。

絵里は近くにあった篭をとり タバスコを元に戻す。 が、タバスコが篭に入ってしまう。気づかず絵里は飲料コーナーへいく。

絵里、いつものコーヒーと。 あと、BLTでよいか。

絵里はレジにいく。

レジ、いらっしゃいませ。袋入れますか。

絵里、お願いします

レジ、815円です

絵里、あれ?

レジ、どうしました?

絵里、815円?

レジは商品を見せる

レジ、足りませんか?なにか やめますか?

絵里、あ、タバスコ。

レジ、タバスコやめますか?

絵里、。。いえ、いいです。 払います。

レジ、ありがとうございました。

絵里、なにやってるんだろ私。。。いいや。

絵里は外にでる

美咲、遅かったね、早くいくよ!

絵里、美咲は元気だよね。羨ましいよ。

美咲、ゴールデンウイーク唯一の散歩だよ!楽しまなきゃ。いつまでも家につんごもっていられない。でも遠出は まだ怖いし。近くの海が見える公園がぴったり!

絵里、そうだね

美咲、5月にしては暑くないよね。まだ、肌寒い。まだ、 羽織るもの必要だわ

絵里、海だからね。空、海、 風。

美咲、絵里、詩人みたい。ね、あっちいって座ってサンドイッチ食べよう!

絵里、うん。

美咲、ああ!もう、仕事のこと考えてるんでしょ?今はゴールデンウイークなの。忘れなきゃ!今日は5月2日!まだ 休みは続くよ。

絵里、あはは、そうだね。美咲はオンオフはっきりしてるもんね。羨ましいよ。

美咲、夢なの!オフ5日制!

絵里、遥斗さんに頑張ってもらわないとね。うふふ。

美咲、コロナ終わったら、ハワイに移住したい

絵里、いいかもね

美咲、あのベンチにしよう

絵里、いいね。

美咲、思ったより人多いな。

絵里、みんな美咲みたいな気分な人多いんじゃない?

美咲、絵里は違うの?

絵里、私は。うん。同じ。

二人はベンチに座る。

美咲、いい眺め。さっそく、 BLTとJAVAテイといこう。 絵里は何買ったの?

絵里、わ、私は、、私もBLTだよ。

美咲、だよね。なんだかんだ いってBLTが一番うまいよね あれ?それタバスコ?ええ?

絵里、いや、これはたまたま 買っただけ

美咲、絵里、辛いもの苦手なのに?

絵里、オブジェ

美咲、忘れられないんでしょ

絵里、いや、だか

美咲、いや、私きつくいえないけどさ、ひきづっているのはちょっと痛いな

絵里、ほっといてよ

美咲、仕方ない。か。はやく 絵里にもいい人できるよう、 願ってるよ。

絵里、オブジェ

美咲、ねえ、ボイスジムやらない?

絵里、ボイスジム?

美咲、そう最近、かわいい、 男性入ったのよ

絵里、あたし出歩くのはちょっと

美咲、オンラインクラスよ。 月5500円だし。みんなわいわい。楽しいよ。

絵里、オンライン。なら。

美咲、純くん。多分、あのこ 独身だよ

絵里、あたしそんなにがっつき女子じゃない。

美咲、まあまあ、人生変化が あった方が楽しいよ

絵里、悪い変化はヤダけど

美咲、ポジティブに!

絵里、はいはい。じゃ考えようかな

絵里はタバスコを見つめる。

美咲、それそのうち使わないオブジェになるから。

絵里、あたしは上書き型だから、タバスコも大事。

美咲、はいはい。美味しいね。BLT

絵里、うん

どうかあなたは あの頃のままいてください
変わることなく 大人になるのは
無理でしょうか
あの夢は近づいていますか?
運命はあなたに優しいですか?
ずっと 傍で 見ていたかったのに

夏の始まりに吹いてくる風はかげろう
ちぎれ雲からの夕立泣いたら 青い空・・ 夢

新しい恋はこの痛みせつなさに変える
それがさびしいこんな私 叱りにきてよ
もう次の恋はしていますか?
その人はあなたに優しいですか?
きっとそれは私だったのに

夏の終わりから消えぬ潮騒はまぼろし
一生分の恋 なんて短くて長い面影

もし二度と振り向 かずいるなら
人生が誰かとの見方ならば
羨むよな 幸せ探すわ

夏の始まりに吹いてくる風はかげろう
ちぎれ雲からの夕立泣いたら 青い空・・ 夢

夏の終わりから寄せる思い出は蜃気楼
蝉時雨の頃 会いたいあなたは
夜空の虹

平松愛理

いいんじゃない?(短編小説:BON)

智子、美里久しぶり!

美里、ともとも、久しぶりだね。まあ、zoomだけど。

智子、最近どお?

美里、聞いてよもう!一年半いた職場の派遣、くびきられたのよ!

智子、おだやかじゃないね

美里、長くいるために!出勤した日はたくさんお菓子買ったり。みんなに愛想振りまいていたのに!

智子、美里の職場は在宅ワーク率どのくらい?

美里、週2で出勤、あとはテレワーク。

智子、週2だったのね

美里、テレワークの良さが、 わかってきたとこだったのに!

智子、そうなの。まあ、厳しいこといえば、お菓子あげてたら長くいれるとは。

美里、わかってるわよ!だからテレワークでも時間外勤務たくさんやったわ。お金つかない勤務よ!

智子、そうか。

美里、今忙しくなっちゃって 私、きられるのにたくさん、 仕事やってる状態!お金つかない残業もね!

智子、そもそもなんできられるの?

美里、予算の縮小だって。繁忙期と閑散期があって。確かに暇な月あったよ!だけど! だからって!きる?!

智子、ということはみっちー のあとは誰もはいらないの?

美里、4年いるお局様、兼任よ!長くいるからってさ!

智子、ま、決まったことは仕方ないね。頭切り替えて、新しいとこ見つけないと。

美里、新しいとこ決まったよ

智子、決まったの?ならいい じゃない。

美里、よくない!そこは完全出社なの!テレワークないの

智子、まあ仕方ないか、そこは!

美里、せっかくいい、職場環境だったのに!

智子、ラッキーは続かないものよ。まあ、想いどおりにいかないものよ。いいんじゃない!今の日本の状態考えれば そこもテレワークやるかもよ

美里、希望でしかないわな。 偉そうにいってるともともは どーなのよ。

智子、今月厳しいんだよね。 娘が熱だしちゃって。

美里、え?まずくない?かかっちゃった?

智子、急いでpcr受けたわ。 お医者さんは家族は受けなくていいと。でもタクシー代やら、調理も危険だから、レトルト買い込んだり、今月、赤字なのよ

美里、そんなことより、陽性?陰性?

智子、陰性

美里、ならいいんじゃない? 陽性だったらいろいろ大変だよ。

智子、いいとしなきゃいけないか。

美里、レトルト持つし、面倒なときに使っちゃえばいいし。無駄になってなくね?

智子、その前日に野菜たくさん買いこんだよ。ほとんど 捨てたわ

美里、いいんじゃない?ポジティブ変換。人生うまくいかないからいいのよ。

智子、その言葉、お互いよ!

美里、あははははは。そうだね!

今度で何回目? ごめん笑っちゃった
年中ダイエットじゃ そりゃ食べちゃうてば
我慢しなきゃ味わえない ここまでの美味しさは
間違えなく世界1のHAPPY

いいんじゃない?
それでいいんじゃない?
思い通りにいかないからいい

そっかあの彼氏と 別れちゃったんだね
忘れられないのなら 忘れないでいいよ
失恋のお陰で やしなった「見る目」で
もっといい人見つけられるよ

いいんじゃない?
それでいいんじゃない?
思い通りにいかないからいい
いいんじゃない

そのままのあなたでいい
戦わないでいこう
焦らずにあわてずに でもあきらめずに
迷いながら くじけながら
続けてる人に 神様は微笑む

仕事やめたいって噂は本当なの?
つらくなるって事は 頑張ってる証拠
今夜ここへ皆んな集まるから来てね
バカっ話しで息抜きしよう

いいんじゃない?
それでいいんじゃない?
思い通りにいかないからいい

いいんじゃない?
それでいいんじゃない?
思い通りにいかないからいい
いいんじゃない
いいんじゃない

平松愛理

観覧車(短編小説:BON)

育江:さ、着いたよ。ほら、泣き崩れていないで。外の空気吸おう。

育江と美空はドアを開けて車からでる。美空は終始顔をハンカチで覆っている

育江:今日は空いてるかもね。まあ、密室だからね。2人定員だろうな。

二人は歩く。

スタッフ:お二人で

育江:はい。

スタッフ:どうぞ。

育江:入るよ

ゴンドラが動いているところに二人乗り込む。

育江:はい乗った。見てご覧よ。上がっていく景色を見たら落ち着くかもよ。

美空:うん。

育江:ここなら、大声だして泣いていいから。私しかいないし。

美空は嗚咽したあと、静かに話しだした

美空:人生最後の恋愛だったのよ

育江:最後かどうか分からないけど、うちらもぼちぼちいい年だからね

美空:7年付き合った、敏生さん

育江:ああ、敏生さんね、

美空:正直、この年だし、正直子供は作らなくていいと想った。

育江:まあ、うちはアラフィフだしね。そうかもね。

美空:私はこのまま、敏生さんと一緒に暮らす、それだけでいいと想ってた

育江:そうだね。いいところも、悪いところも知り尽くした、敏生さんだからね。 賭け事もやらないし、酒煙草やらないし、理想の彼だもんね

美空:その理想が崩れ落ちたのよ

育江:そうなの。でも浮気するような人でもなかったでしょ。一度だってそんな・・

美空:今まではね!でも今回は違うのよ!

育江:そう。

美空:30歳の若い女性、春奈という会社の後輩に告白されて、

育江:え?そうなの?そんな若い女性にもてる人じゃ

美空:なかったはずなの!でもそんな実直な敏生さん狙ってきた!そういう人が好みだって!

育江:彼だっていい年だし、大人の対応するはず・・・

美空:男って、ほんと若い女好きね!色じかけで誘われたら、ころっと一晩。

育江:あらっ

美空:その一晩がいけなかったのよ

育江:もしかして

美空:妊娠さしちゃったのよ!

育江:じゃあ、彼は。。

美空:責任とるしかない。自分も、最初で最後だと。この年で30歳に見初められるのは。 だから自分は春奈を選ぶ。君とは別れるって。

育江:ひどい!

美空:もう、あたしダメかもしれない。この後の人生、ずっと敏生さんのいる人生しか考えてこなかったし あたしももうアラフィフで。生きる気力なくなった!

育江:ひどい!ひどいよね。でも、私がいるわ。ばついちの私が

美空:育江~~!

育江:ここは観覧車。大声で泣いていいんだよ。あたしだけしかいないから。

美空:育江~~!

育江:泣くだけないて。見てご覧よ。景色が綺麗よ。そろそろ一番高いところに来るわ。 高いところからみたら、多分、そんなこと小さなことかもしれないよ

美空:うわ~ん

育江:想えば、10年前、あたしが泥沼の離婚劇繰り広げて居た頃、ここに来て、あなたが 慰めてくれたね。覚えてる

美空:。。。

育江:あの時、誓ったの、あなたとは人生を通して親友でいようと。

美空:。。。

育江:その婚約指輪、はずしちゃいなさい。まだ人生は続くの。そして何が起きるかわからないのが人生なの

美空:。。。。

育江:ねえ、相談なんだけど、二人でフラワーアレンジメント始めない?

美空:え?

育江:この先、人生、沈んでいても仕方ないでしょ。新しい世界に飛び込むのよ。新しい人生を歩むのよ

美空:あ・・・たらしい・・人生

育江:そんな人の為に、人生終わりにするつもり?。。さあ、観覧車が下がってきたわ。 ここを出るときは。。もう新しい人生が始まってる。

美空:そうね。フラワーアレンジメント。新しい人生

育江:さあ、泣きおわったら、美空、人生第二章のはじまり。

美空:。。。よし。。たいしたことなかったよ。あんな人

育江:そうそう。その調子。以外と離れてみると、そんなんでもなかってわかるよ。 私もそうだったし。

美空:育江は一人で淋しくないの?

育江:あなたがいるじゃない。私たちは親友だよ

美空:そうだね。ありがとう。決心ついた

美空は指輪を外して座席におく

美空:これここに置いてく。

育江:そう、置いてって、新しい人生はじまるの

美空:そろそろ地上ね。ちょっと顔整えるわ。

観覧車(平松愛理)-----

観 覧車が空へ 昇ってゆく度
さっきまでなかった景色が
どんどん見えてくる
今日に追い立てられて 見失ったものを
忘れてしまうとこだったね
とりあえず今 ここで休んでいこう

ここなら思いきり泣けるでしょ
女同士 何も気にしないで
運転中に助手席で泣かれると
気が気じゃないからね

アイラインまで流れ落ちたら
学生の時のあなたの顔
ハンカチこんなに汚しちゃって
今度は余程のことなのね

山並みが遠く 続いている
海だったとこに ビルが建って
知らないうちに時間は経つね

普段暮らす街は あんな小さいんだね
私達の悩みもきっと
ちいっぽけなことかもよ
取るに足らないこと 泣いたり笑ったり
ひとつひとつに一人一人が
日々精一杯で うん、それでいいんだね

昔この辺野原だったね
そう思うと 私達長いね
どんなに久し振りに会っても
挨拶より会話から始まる

足下を見たらついて来てた
観覧車の影はとても濃くて
それは太陽がしっかりと
私達を応援してるから

一番高いとこ 過ぎた頃に
コンパクトでメイク 直している
地上に降りる覚悟をしたね

観覧車が地上に 近づいてゆく度
ビルや家や道路や人が
どんどん大きくなる
あなたが泣いたのは 頑張っているから
無駄な涙は決してない
その先にはいいコトが待っている

これからも色々 きっとあるだろうけど
いつでもあなたには私がついているよ
まずは ドライブしよう

平松愛理

須磨海岸(短編小説:BON)

道彦:やっぱりここにいたんだね。

光里:あなたさっきからいたでしょ。

道彦:あっ、気付いてたのか。

光里:そんな大きな図体がうろうろしてたら嫌でも気付くわよ

道彦:いや、邪魔しちゃ悪いかなと想って。。

光里:ふふっ、さっきからずっと邪魔よ。でも大丈夫、海は応えてくれた

道彦:気付いているなら声かければよかったな

光里:まあでももう1時間は海と会話してたから、大丈夫よ。

道彦:海はなんて云ってた?

光里:内緒。

道彦:まあそう云わずに、食うか?

光里:なにそれ?チョコレート?ゴディバ?似合わないね

道彦:まあ、そういうなよ。今日は2月14日だろ。バレンタインチョコだよ

光里:あんたこの後に及んで求愛とかするつもり?

道彦:そんなんじゃないさ。それに昔は女性があげるものだったけど、今の俺にとっては挨拶がわりさ

光里:じゃあ、もらうわ。

道彦:昔からそうだったね。苦しいことあるとここへきて、海を眺めて。

光里:悪い?

道彦:いや、その習慣、俺にも感染しちゃってね

光里:ウイルスみたいに云わないで

道彦:海は何て云ってた。

光里:チョコくれたから、云ってもいいかな。海って変わらないよね。あたしも変わってない。 変わらなくていいといってくれた

道彦:いいね。それがいいよ。海っていろんな表情みせてくれるから、海との会話楽しいよね。

光里:へえーあんたもそうなんだ。

道彦:海の場所によってもいろいろ表情が違う。千葉の房総もよかったけど

光里:あたしはここが好き

道彦:俺も好きだよ。

光里:あたし決めた。今の仕事、気持ち変えずに続けてみようと想う。いろいろ状況は変わっていくけど

道彦:いいね。それがいいよ。

光里:ひろふみくん、成長したね。

道彦:だから俺はみちひこだって。ひろふみくんは3歳の頃の初恋の人だろ?あの人どうしたかな

光里:追わないことにしてるの

道彦:俺はお前を追うよ

光里:だからこのくされ縁で口説いてるつもり?

道彦:なんか、恋愛というよりかは、心のパートナーになりたい。海と三角関係

光里:本気でいってるのか冗談でいってるのか

道彦:俺、お前の仕事のアシストするよ

光里:今の仕事どうすんの?

道彦:今の時代、1つの仕事だけで生きていくのは危険だ。と海が教えてくれた。 だから、空いた時間に光里をサポート

光里:金でないよ?

道彦:光里からもらおうと想ってない。アイデア考えて仕事作るのさ。

光里:あんた面白いよね。

道彦:ビジネスパートナーになろう。

光里:海に訊いてからね。

道彦:ははは。海には勝てないや。

光里:ふふっ。

須磨海岸:作詞・作曲・歌:平松愛理

幼い日思ってた大人に
私はなれているのかな
海に向かって大声で
歌うのが大好きだった

大人になれば強くなる
決まり事のように信じてた
砂を蹴る靴底の感触が 同じで
あの日無かった赤い遊歩道は
まだ歩きたくない

今日も変わらずに ただ寄せては返す波
引き潮に流され遠くなる 
ガラスの瓶は追いかけず
失くすことを恐れず自分の今
繰り返せばそれでいいよと
教えてくれてる気がするよ

上京する前描いてた
夢には近づいてるかな
髪型も着る服もお化粧も 違うけど
あの日と一緒のやりたいことまだある
やっと気づいた

太陽の沈む場所が 西に進むように
大人になる度諦めること
自然に増えていくけれど
叶いたい夢がある限り
私は私でいられるって嬉しくなった
口笛で遊歩道行こう

今日も変わらずに ただ寄せては返す波
引き潮に流され遠くなる 
ガラスの瓶は追いかけず
失くすことを恐れず自分の今
繰り返せばそれでいいよと
教えてくれてる気がするよ

平松愛理

この街のどこかで(短編小説作BON)

真帆は居間でスマホ見ている 賢治がパジャマ姿で紅茶を もっている。

賢治、何見てるの?

真帆、な、なんでもないよ。

賢治、平松愛理をゆるーく応援したいすべての人へ。

真帆、なに覗き見してんのよ

賢治、すまん、すまん。紅茶飲む?

真帆、ありがとう

賢治、平松愛理。部屋とYシャツと私のひとか。懐かしいな、学生の頃聞いた。

真帆、そ、そうだね。

賢治、あれ?真帆。ファンだったっけ?

真帆、た、たまたま見てただけ。

賢治、へーたまたまでファンサイトか。

真帆、あっちへいってよ!勝手に覗き見して。

賢治、平松愛理かあ。大学の 頃、苦い思い出あってね

真帆、そうなの?今まで聞いたことないよ?

賢治、話す気になれなくてね。ほんとは墓場までもって いくつもりでいたけど。

真帆、どんな話?

賢治、噂があってね。俺のことが好きっていう。その子は 物静かで、内気な感じの。最初は受け流してたけど、周りがはやしたてるから、その気になっちゃってね。ちょうど バレンタインも近かったので その気になっちゃってね。

真帆、その子はあんたのこと 好きだったの?

賢治、いや、親友的な。結局、バレンタインもらえなくて、落ち込んでね。でも内気だから渡せなかったのではないかと、思い込んで次の日、 告白したんだ。

真帆、へー。自意識過剰。

賢治、告白した途端なにも言わず逃げてしまって。一週間後にテープが届いて。聞くと最上級I LIKE YOUだったというね。平松愛理の。

真帆、あーなるほど。

賢治、今、こうやって真帆と 一緒になって15年。たまに思い出すことがあるんだよね

真帆、あんたもしかして浮気

賢治、気にはなるけど、会いたくはないよな。気になって SNSで探すけどいなくて。

真帆、だからあたしもSNSやらないの!見つかるの嫌だから!

賢治、え?それって。

真帆、なんでもない!

賢治、あれ?何故、こんな話。あれ、ファンサイトは。 何故?

真帆、私も聴いてた時期はあったの!

賢治、もしかして俺みたいな エピソードある?

真帆、あっても教えない!

賢治、フェアじゃないなあ。 とりあえず紅茶飲んで

真帆、ライン以外絶対やらないんだから!

賢治、墓場にもっていくのね

真帆、その話終わり!

賢治、ははは

------ この街のどこかで 平松愛理

君なしじゃただの街
そんなこと言っていたっけ
忘れかけてた
一歩ずづゆっくりと
胸の隅しまった記憶
よみがえるの

この本屋通りすぎたら
いつもあなたがいなくなり捜した
そしてここから店をのぞく
あのくせ今日もまた
知らずくりかえすの

* それぞれの人生
もう待つ人がいて
どんなに幸せだとしても
時に迷って 時に悩んで
自分を確かめたい日もある
お互いあの恋は
必死に守ったね
愛とは言えなかったけど
あなたどうなの?ふと思い出す?
この街のどこかで

今 日の様に陽がだいぶ
短くなったあのベンチで
ケンカをしたね
理由さえ失くすほど
難しい長話で
風邪をひいた

熱が出たと電話したら
二つもつぶれた目玉焼きサンキュー
今は愛する人に作る
卵失敗したら
その日は風邪をひく

あれからの道のり
充分過去になっていつからかあなたと同じ
名前呼ばれても振り向かなくなり
いつからか人混みの中
あなたの面影と
歩かなくなったの

* 今頃きっとくしゃみしてるね
この街のどこかで
毎日満たされていても
時に迷って 時に悩んで
自分を確かめたい場所がある
笑顔でもう一度
会いたくはないよね
あの日はここで終わったの
全てのものが始まりだった
この街のあの頃

い つからかあなたと同じ
名前呼ばれても振り向かなくなり
いつからか人混みの中
あなたの面影と
歩かなくなったの

* 今頃きっとくしゃみしてるね
この街のどこかで

平松愛理

ウサバラDE.東京(短編小説作BON)

(ウサバラDE.東京!フ!)

多恵は歌い終わるとマイクを机に置く。

はあー。気持ちよかった!
ひとりカラオケ、まじ最高!ああ、そろそろ9時か。
そろそろだな。

多恵はスマホいじる。画面に女性が見える

多恵、真帆!元気?

真帆、どこ?どこにいんの?

多恵、一人カラオケ。

真帆、あ、いいね。一人カラオケ。気分転換?

多恵、聞いてよ、真帆!もう。

真帆、何、何?

多恵、コロナあけでやっと 裕司くんと会えると思ったのに!なんとか障害で、対応で残業するはめになって!自分、それでも30分で あがらしてもらって、急いでデート場所にいこうと思った矢先、裕司からラインがあったんだけど!

真帆、だけど?

多恵、障害じゃ、今日のデートはオアズケだね。今度またねって!いま向かっているって書いたのに、障害の対応大切にしたほうが、 いい。今、仕事あるだけ、有り難いんだから。いって

真帆、まあ、間違ってないな。多恵、今の派遣、まだ半年でしょ。足元固めないとね

多恵、わかってるよ!わかっているけどさ!ストレスたまっちゃって、一人カラオケよ!わかってよ!

真帆、はいはい。でも多恵、本当に変わったよね。10年前はキャリアウーマンになるんだっ、ていって頑張って 一流企業に就職したのに、半年前、ぷつっと辞めちゃってさ。派遣に移って、時間から時間までの割り切り仕事。

多恵、常谷が悪いのよ!

真帆、あーパワハラの常谷ね

多恵、あいつさえいなければ、あたしだって、あそこ辞めることなんかなかったよ

真帆、まあ、いるからなー一人ぐらい強烈な奴が

多恵、あいつは絶対、忘れない。物語かいて公開してやるんだから!

真帆、でもその一人の為にキャリアウーマンを捨てた

多恵、昔はビジョンあったの!花形といわれる部署で、プレゼンしてるできる肩書き女

真帆、まあ常谷いるかぎり、できないとかいってたもんね。そのビジョン

多恵、あいつは潰すことしか考えてない

真帆、そうそう、おじさんの演歌でも手拍子して、愛想ふりまいて。

多恵、みんな無駄。もうさよなら!もう、肩書きなんかより、そこそこ働いてそこそこ給料もらって、そこそこ生活 することに決めたの!

真帆、まあ、今、正社員は少なくて派遣のほうが多いもんね。それもいいかもね

多恵、もう、裕司と結婚して、そこそこの人生歩んでいくんだから

真帆、それもいいかもね

多恵、と!想ってたのに、コロナで会えないし!コロナあけたのに、なんちゃら障害で残業してあえないし、 やってらんないよ

真帆、それでカラオケなの?

多恵、女のバランス保つには3つの場所が必要なの!恋とそこそこの仕事と憂さ晴らし!

真帆、一人カラオケいいね!

多恵、でしょ?

真帆、まあ、いいじゃない。ドリンクぐらいあるでしょ?リモート飲み会しよっ

多恵、いえ~い!憂さ晴らししてやるぜい~

真帆、ははは、うっせーわ

多恵、ははは

ウサバラDE.東京

仕事のあとのビールはのどにくるね
今日も歌おうかな エコーぎんぎんで
さすがにブチ切れても 社内スマイル
たてついて家賃払えないの馬鹿らしい

なんだかんだで30分デートに遅れて
地下鉄上がって見たメール
「コンドマタネ」となんでよハチ公
音程とれない おきまりのNUMBER

上に気遣い 下に愛想つかい
恋に見放され
今宵ウサバラ・DE・東京

カラオケのレパートリー底がつきて
おじさんの演歌 手拍子してる
思えば入社の頃 抱いたVISION
持ち続けるには重過ぎるジョッキの泡
尽 くしてクビとぶ時代
本当の理想は肩書きもあるいい女
こんな筈じゃない
叫ぶ代わりに
廻りが飽きても おんなじNUMBR

Uh- 仕事して私を磨き
Sa~ 恋愛で女磨く
そしてBa~ 捨てきれぬ明日のために
La~ 今日の憂さ今日はらす

女は2つの顔もちこたえるには
3つの場所が必要なの
恋と仕事とそして憂さばらし
いい加減迷惑 又 このNumber

店から出たら爽快 彼に携帯
楽に謝れるまでが
ウサバラ・DE・東京
星なんかみちゃう
これがウサバラ・DE・東京
ウサバラ・DE東京
ウサバラ・DE 東京
ウサバラ・DE東京

平松愛理

Blue Moon(短編小説作BON)

(あれ?時間過ぎたのに・・・)

裕実はスマホ持ったまま、ベット寝転がり、仰向けになってスマホいじる。

(ラインに投げかけてみよう。。。)

「優。時間過ぎたよー。今週のZOOMデートは遅刻ですか?プレゼント要求するよー」

返信はすぐきた

「ごめん。システムエラーおきちゃって大変なんだ。今夜中止で。」

何よ!!

裕実はスマホをほっぽる

ああ!もう、一杯飲んでねてやる!

裕実は冷蔵庫いき、缶酎ハイをとる

いいや!今日、やけ食い!

裕実は冷凍庫を開けて、アイスモナカを取り出し、袋を破り、モナカを口にくわえる そのまま、自室に戻る。

ああー外出て、デートしたい!もう長いっつーの!この生活!

裕実はスマホいじる

代わりに今からしゃべれる友達いないかな。エリップは?。。。ん~。寝てるか。 つまんね!

裕実はアニスモナカのゴミをゴミ箱に投げて、大きく口をあけて、モナカをほおばり ベットに寝っ転がる カーテンが揺れている。雨が降っている。裕実はアイスモナカをほおばったあと、 ゆっくりと起き上がり、ベランダを覗く

水たまりに滴が落ちて、模様を描く。 水たまりに映っている青々した月が揺れる

・・・もうすぐ終わるよね。この世界からの夜明け・・・
ふんふんふん♪ハミングしていろいろごまかそう。

3日後の朝

ラジオの音で、目が覚める

・・さて、今日から緊急事態宣言解除ですね。戻ってきますね。前の生活!

ほんと?!

裕実は飛び起きる。

裕実はスマホをいじる

「もう解除になったよね!今夜、会える?」

「ごめん!その解除になったから、広島出張になった。」

「何よ!やっぱりあえないじゃん!!!」

Blue Moon(曲:平松愛理)

心がもう1mmも
動けないこんな夜更けに
風が胸をノックした 
こっちだよ 待っているようで
見上げた空に柔らかな月
縮んでた視界が広がる
一番大事なものは何? 気付くために
失くす時間が”今”ですか?

Blue Blue Moon
風が止むまでは
Blue Blue Moon
歌でもうたおう
無観客のLove Song
月に向かって♪Sha-la-la
Blue Blue Moon
昔より青い
Blue Blue Moon
世界中の空
ひとつを目指して
力合わすの見えますか?

降り出す雨のベランダは
色んな円が描くステージ
小さい輪から大きな輪へ
広がって交わるワルツ
踊って止まって弾んで沈んで
ひとつとして同んじじゃない
変わらぬ今はここにない
やっと分かった
まだ遅くはないでしょう?

Blue Blue Moon
おぼろ雲に散る
Blue Blue Moon
月を追いはしない
ただ待つだけのLove Song
微笑みながら♪Sha-la-la
Blue Blue Moon
今日を愛せてる
Blue Blue Moon
気持ちこそが未来
夜明けはもう来る
忘れない今夜の月
Blue Blue Moon♪Sha-la-la
Blue Blue Moon♪Sha-la-la
Blue Blue Moon
Blue Blue Moon♪Sha-la-la
Blue Blue Moon♪Sha-la-la
Blue Blue Moon

平松愛理

ピラフになりたい(短編小説作BON)

光一:あれ?何して

ミコ:今話かけないでえ!

光一:何、かっかして。

光一はミコに近づいて鏡越しにミコを見る

光一:何?そんなにほっぺた赤くしちゃって?紅ショウガばらまいて

ミコ:うまくいかない!うまくいかないの!

光一:何焦ってるの?普段とおりのメイクでいいじゃん。

ミコ:そんな訳いかない!明梨にかたなきゃいけないの!ああ、うまくいかない!

光一:明梨に勝つ?そのメイクで?

ミコ:うるさい!あたしだってうまくやりたいわよ!これ違う!おてもやん!泣けてきちゃう!

光一:あまり口だししたくないけど、ミコ、無理しすぎじゃん?そのままのミコでいいと思うけど!

ミコ:ああ!なんでうまくいかないの!知ってるの!涼くんは、明梨のようなメイクがスキなの!あたし 涼くんを振り向かせるの!涼くんのタイプになるって決めたの!

光一:涼くんは明梨がスキなんだろ?今の二人に隙はないと思うけどな。

。 ミコ:あんたに言われたくないわよ。あたし涼くん好みの私になるの!ああ!話しかけないでよ!時間ない!遅刻ちちゃうでしょ!

光一:僕は君を想って・・

ミコ:ただの同居人の意見なんか聞いてない!

光一:やれやれ!だったら好きにしたらいいさ。全く。

ミコ:カチューシャつけて。よし、もうこれでいい!ああ!遅刻しちゃう!どいて!

光一:はうっ

ミコは走って部屋を出る

涼:あれ?ミコ?どうしたの?

ミコ:奇遇だね!今日、暇してる?

涼:え?!あ、・・なんかミコ、今日、雰囲気違うね。

ミコ:似合ってる?

涼:う・・うん。

ミコ:あ、これね!涼くん、ゴディバのチョコ好きだよね?

涼:え?あ、まあ嫌いじゃないけど。。。

ミコ:じゃ、あげる。

涼:な、なあ、渋谷のハチ公だろ?誰か待ってたんじゃないの?

ミコ:あ・な・たを待ってたの

明梨が近づく

明梨:涼!お待たせ!あれ?ミコどうしたの?こんなところに。誰かと待ち合わせ?

ミコ:私は・・

明梨:涼!待たせたね。コロナ開けで久々だから、楽しもう!

涼:そうだね。

明梨:スタバでもいこっか

涼:いいね。

明梨:ミコ、またね!あたしたちこれから用事あるから

ミコ:・・・・

涼:ま、またね!ミコちゃん。

二人はミコから離れる・・

明梨:何?そのプレゼントみたいなの?

涼:ああ、なんでもない。

涼は急いで箱をバッグにしまう

明梨:さ、まずは、スタバでお茶しよっ

涼:そうだね

ミコは呆然と立ちすくむ。

ミコは、家に帰るなり、ベットに倒れ込んで、嗚咽。
光一がゆっくりと近づく

光一:自爆しにいって泣くなよ。

ミコ:ほ、っつといてっっよ

光一:元々、2人がデートする待ち合わせ場所にいくことが間違ってる。 少なくても明梨がいない日にいかないと

ミコ:そんなの知らないもん

光一:おまえのやってるのストーカだぞ。

ミコ:何故、知ってるのよ!

光一:君のあとをついてったからさ

ミコ:あんたこそストーカーじゃない!

光一:背伸びなんかしなくていい

ミコ:私はピラフになりたいのよ

光一:お前は焼きめしだ

ミコ:認めない!あっちいってよ!

光一:なあ、オレは焼きめしが好きだ!

ミコ:・・・・え?

ピラフになりたい(平松愛理)

フライパンに食用あぶら
玉ねぎ ハムタマゴを割って
ニンジンで色づけ じゃじゃじゃじゃ
じゃじゃじゃじゃ

そして冷凍庫からほとんど
乾燥しかけのひやごはん
すぐあつくなる私 焼き飯 焼き飯

つくりはラフにみえるけど
恋する気持ち一途なの
あなたにどうか 振り向かれたい
そしていつかは食べられたいの
でも本当は私知ってる
あなたはやまのて ピラフが好き

あーピラフになりたい
あなたの好きなピラフに
あーピラフになりたい
あなたのスプーンで触れられたい

今日こそはとおめかししたは
紅生姜を多めにばらまいて
のこり並べたら 朱色の、カシューシャ
けれどウインドウに映るわたし
お化粧ーこーこーこーこ過ぎる 
まるでもう少しで髭のボーカル 残念

どんなに ないてさけんでも
でてくるなみだしょうゆ味
どんどんからくなってしまうは
これじゃますますピラフになれない
あせる心を あおるかのように
あなたは 変わらずピラフをオーダー

あーピラフになりたい
あなたの好きなピラフに
あーピラフになりたい
あなたの息を感じたい
ピラフになりたい
ピラフになりたい
あーピラフになりたい
あなたの好きなピラフに
ピラフになりたい
ピラフになりたい

平松愛理

あれY(短編小説作BON)

25周年の約束。美絵は通帳棚にしまっていた、夫からのディナー招待状を取り出す。それは22年前、娘の夏海が 生まれた時にくれた私たちの未来の招待状。タイムカプセルのようにとっておいたのを開けてみた。そこには 生まれたばかりの夏海の写真と丁寧な几帳面な夫の字が書いてあった。夏海の就職が決まる頃、僕らは2人の カップルに戻って、レストランで2人で乾杯しよう。そう書いてあった。ついにこの日が来たのね。美絵は 招待状をそっと胸に充ててみる。・・いろんなことがあったね。特製スープつくってやろうかと想ったときもあったし、 あなたのいびきがうるさくて、喧嘩して、それから寝室は別でとなった時のこと。でも悪いことばかりじゃなかった。 あなたはまめで、おおざっぱな私を手助けしてくれた。ちょっとケチなとこがたまに傷だけど。

「おい、何してる。もういくよ」
「ちょっと待って」

美絵は招待状をしまい、別の扉を開けて、あなたが25年前にくれたパールのネックレスをつける。 このとき、あなたは豪勢な金の使い方だったな。夏海が生まれてから、あなたはすごくケチになった。

「おーい」
「もういく」

美絵は急いで玄関にかけてく。

「いつまで時間かけてんだ」
「女性はこんなときは時間がかかるものなの!」
「それは知らなかったな」
「今日ぐらいゆっくりいきましょうよ」
「時間までには到着したいからな」
「楽しくいきましょう。記念の日だから」
「夏美は?」
「大学の友達と飲み会よ」
「男はいないだろうな?」
「今日はそんなこと心配しなくていいのよ」
「そうなのか?」

智則はジャケットを気にしている。

「夏美は男とデートじゃないだろうな?」
「あなたとは違って夏美は異性関係はきちんとしてるわ」
「昔のことをうだうだと、今日、楽しくいこうといったじゃないか」
「そうだっけ?」

智則は逃げるように歩きはじめる。美絵は追うように智則について行く。 レストランは智則が予約した。そういうところはまめだ。体裁だけは気にする人だから。 だけど、メニューを見たとき、智則の顔つきが変わった。 ぼくはワインだけでいいと言い出した。それじゃ、あたしはステーキオーダーできないじゃない。 今日の為に、昼飯代をケチっていたんじゃないの?夜は飲んで帰ってくるくせに。

「とりあえず乾杯だ。」
「そうね」
「乾杯」
「乾杯」

あたしは夏海のことで一生懸命になって、ときめきは減ったかもしれない。 だけど、あたしはあたしなりにやってきた。そしてこれからも。 智則にもう正直ときめきは感じない。一緒にいる人になった。 でもそういうものかもしれないな。

「25年前のこと覚えてる?あなたが結婚式の二次会でこけそうになったこと」
「覚えてるよ。真っ暗だったからね。サプライズで。危なかったよ。結婚式で骨折なんかしたら
洒落にならないからね」
「あのとき、私に25年後の招待状を書いてくれたね」
「・・忘れたよ。そんなこと」
「今日は何の日?」
「さあね」
「ステーキ頼んでいい?」
「お前が払うならな」
「ケチ」
「スパゲティなら許そう」
「あ、そうじゃ、今度、西須磨小学校の同窓会があるのよ。」
「へえ」
「靴かっていい?」
「なぜ、靴が必要なんだ?」
「必要でしょ?買ってよ」
「必要ない」
「ケチ」
「じゃ、へそくりでエステにいっちゃうから」
「へそくりもってるならよこせよ」
「嫌よ」

相変わらずケチね。でもいいや、夏海も就職決まったし、いっちゃおう。こっそりと。

「それより、お袋がそろそろ80なんだけど」
「お母様と同居の話?あまり興味ないわ」
「興味とかいう問題じゃない」
「そうかしら。ケチを直してくれたら、考えるわ」
「僕はケチじゃない。倹約家だ」
「今日みたいな日に使うのが倹約家だと想うけど」
「お袋も年だからな」
「もう夏海も就職したし、あなたとなら離れても大丈夫」
「なにが大丈夫なんだ?おい」
「ふふふ」
「ふふふじゃないだろう?」
「確かに、この家は2人で住むには広いから、お母様の近くのマンションにひっこしてもいいよ」
「近く?同居じゃなくて」
「あとで考えとくわ」

真面目だから憎めない人。なんか恋愛ではないよね。これが夫婦かもしれないね。 でも、今日ぐらい、こういうこと忘れて優雅に食事したいもんだわ。



あれY(平松愛理)

お願いがあるのよ あなたの苗字になった私
こんなに時が経った今 ちゃんと聞いてほしい
飲みすぎて帰っても あなたのご飯はあるけれど
食べたらきちんと洗って、お皿と私の機嫌をなおして
部屋とYシャツと私 愛するあなたのため
毎日磨いていたいから
心の小さなホコリ あなたがキレイにして 笑顔でいさせて

トキメキは減っても女の勘は衰えない
あなたは嘘つくとき右の眉があがる
あなた浮気したら 私は子供を守るから
結婚祝いのカップに 特製スープ ひとりで逝って

部屋とYシャツと私 愛するあなたのため
毎日素敵でいたいから
久しぶりの同窓会 エステとバックと靴
胸はって 行かせて

大地を割るような あなたのいびきは大問題
幸せは夫婦別室で 朝のおはよう 好き
やがて家族増えて キスと会話が減っていったね
私の呼び名も変わって 世界中いる「ママ」になった

子供も無事に巣立ってお義母様とも同居
あなたが選びたくなったら
最初はこう言わせてね 私はあなたとなら離れても大丈夫

もし私が先立っていつか彼女出来たら
最高の妻だったと言って
天国でその言葉とあなたの右の眉
見定めたいから

部屋とYシャツと私 愛するあなたのため
毎日磨いていたいから
人生の記念日には君は綺麗といって
私を名前で呼んで

その気でいさせて

平松愛理

ビーチサンダル(短編小説作BON)

僕だって悩みはあるんだ!もう自分で考えてくれ。俺はもういやだ、でてく。 わかったわよ!自分のものは全部もってって! 久美子はうなされて、がばっとおきる。 うなされていたのか。久美子はよろよろ起き出して玄関にいく。 ・・ビーチサンダル、ある。そう呟くと少しほっとした表情で台所へ向かう。 冷蔵庫を開ける。牛乳がないことに気づく。あ、忘れてた。 久美子は仁志の言葉を思い出していた。君は悩みごとあると、思考が停止して やるべきこと忘れちゃうね。・・確かにそうかもしれない。 いつもは久美子が悩んで必要な買い物を買い忘れても、仁志がそれを察知して 買ってきてくれていた。でももう仁志はいない。 朝起きての1杯の牛乳の習慣さえ、心配ごとがあると買い忘れてしまう。 いいや、下のコンビニで紙パックの牛乳を買おう。 そうつぶやくと、着替えて、アパートを出る。 あの時、仁志といった三浦海岸に、一人で行こうときめた三日前。 あのときは、段取りは全部仁志がやってくれた。だから今日は自分ひとりだけで いけるように決めたんだ。でもいざ調べてみると、結構面倒だったりする。 久美子は下のコンビニで牛乳パックを買って飲みながら、スマホであのときいった場所 を必死で調べる。 あのときは仁志が車でナビゲートしてくれた。今回は電車乗り継いでいく。 自分が変わるはじめの一歩の為に。あのときいった海岸の浜辺につくまで3時間かかった。 平日の春の海は穏やかだった。あのときと同じように。 地図にない島。あのときここに座ってかたりあったっけ。 「自立」をテーマに出かけた今日。でも思い出すのは仁志とのここの思い出ばかり。 水泳のインストラクターだった仁志はとにかく教えることが上手だったな。 かなづちだった私を泳げるようにしてくれた人。特に仁志はブレストが好きだった。 高校時代、ブレストの選手だった。あの人のブレストの息づきをみていると、仁志の みたことのない中学時代の泳ぐ顔が思い浮かぶようで。 仁志は水泳だけじゃなくて、なんでもインストラクターだったな。 探究心旺盛なあなたは、なんでも研究して自分でできちゃう人。そこに私はあなたに惹かれた。 でも、仁志あなたにとってはそれが重荷だったのかな。 私は仁志に頼りっきりで、買い物や友達関係の悩みや職場の悩みさえも全部、まずあなたに相談してた。 それでいいと想ってた。あなたの想っていることに従うことが、二人にとっていい関係だと思い込んでた。 二人は二人だったのにたったひとつになろうとしすぎた。あなたの色に染まろうとしすぎた。 久美子は一人砂浜に座る。指で砂浜の砂で「卒業」の文字を書いた。 あなたがここで履き替えたサンダル。あのサンダルは取りに来ないで。私は毎日出かけるときみて、 これからの自分を見つめにいくわ。私、強くなる。きちんと自分もつ。 それが、あなたのさよならから学んだこと。卒業試験。いい女になってみせる。 この場所は仁志と私だけのもの。この記憶は忘れないでね。 久美子は立ち上がって、歩き出す。

ービーチサンダルー平松愛理

自分のものは全部持ってってといったのに
玄関のビーチサンダル見つけホッとしてる
あの日山あい抜けて偶然出た海辺で
地図にない島についた冒険者気分だったね

「ずっと普段も履くからと」
あなたが置いたくせに
ついた砂はまだ私払えない

次に海行くときに あなたは思い出すね
サンダルを置いた場所 でも取りにこないでね
あの海の砂を他の誰かといく海岸へ
連れていかないで

あなたの平泳ぎの息つぎが好きだっ た
子供の頃きっとこんな顔だったろうって
波にのまれたらすぐクロールで泳いできた
やがて波をかわすより先にあなた呼んでた

困ったことが起きると答え自分で出すより
まずあなたに聞くようになってたね

もっと私強くなる きちんと自分を持つ
だからちゃんと愛せてたこの証はここに置いて
毎朝ドア開け出掛けるうちに
「私は私」って胸はって生きたい

一人になって分かった 二人は二人だったのに
たったひとつになろうとしすぎた

次の恋する時のあなたに頼みあるの
サンダルで行った海 彼女には教えないで
あの記憶だけは他の誰かとぬり変えないで
秘密にしてよね

平松愛理

なんかヤバい(短編小説作BON)

博美は時計台の前にあるベンチに座っていた。
20ひきはいるアヒルをずっと眺めていた。
池の周りの鉄棒の上にきれいに並んでいる
かと思うと一斉に飛び回り、池に舞い降りる。

いいな、楽しそうだな。
博美は呟いた。

しばらく、その様子を眺めていた。
風は少しふいていたが、暖かい太陽が博美を
照らしていた。

10分ぐらい時間はたったであろうか。
博美はスマホで茂のラインをみる。

もう君の悩み聞くの飽きたよ。
昨日のライブあまり人入らなかっただの
あのmcすべったかもとか
万人受けする詞が書けないとか。
周りの反応気にしすぎって前にもいったよね
今の博美は魅力ないよ。
とても応援できないな。
前のほうがイキイキしてたし、博美しか書けない曲
たくさんあったよ。
そんなに周りがきになるならやめたら。
毎日毎日、博美のラインそればっかり。
しばらく、返信しないね。
会うのもしばらくやめよう。
博美が変わったらまた連絡ちょうだい。

ああ、今日はラインみるの辞めたと決心したのに

博美はため息ついて、スマホをしまう。

また、博美はアヒルを眺めた

一人の女性が近づく

あ、やっぱり博美ここにいたか。

珠美!え?なんで?ここにいると。

博美はさ、悩み事あると、この池にいつもきてた
じゃん。昔から変わらないね。詞もここで、よく
作っていたし。創作しているのかな。

いや、創作していないし、詞書けないし、メロディ
かけないし、彼氏に愛想つかされ振られるし。
さんざんよ。
茂さん。なんて?

人の目気にしすぎっ。疲れたって。

ははは、確かにそうかもね。

どうすればいいか。

陽にあたる。

なにそれ。

心が上向きになるのよ。
それとさ、こういう話してあげようか。
国民的代表曲のあの曲ってさ、よくよく考えたら、
書いた人自身のことじゃん。あのアーティスト自身
の人生振り返って思って書いた曲じゃん。
その心の部分が、聞いているひとにもどこかにあって
それで共感を得たんじゃん。
共感はあとからついてくるものよ。

そういう観点からいったら、今の博美は曲つくれなくて当然かもね

そうか。

じゃ、逆手にとってみれば。
今の博美の状態は?

周りが気になって、自分がない。どこいっちゃったんだよ。

それだよ。なんで?そうなったの?それを題材にしてみたら?

そうか。

周りを気にしすぎて自分を見失ってる人に勇気を
与えるかもしれないよ。

おお!そうだね

じゃあ、私もういくね。そこで詞を作っててよ
あとで見せてね、じゃ。茂さんもそのうち
戻るでしょ

珠美は颯爽として立ち去る

博美の表情は変わっていた。アヒルと同じ気分に
なった。博美はにこやかな表情でアヒルを見ていた

平松愛理- なんかヤバい

相手は何で 何を思って 何を云ってて
何を考え 何を期待し 何をしたいのか
やたらとらわれてる・・・とらわれてると気がついたとき
え~?! 自分がない。どこにもない。どこいっちゃんだよ

一番大事なのは 何よりもはじめに
自分のこと何者か知らなくちゃ・・・早く知らなきゃ。

私は何で、何を期待し、何が言いたくて
何を考え、何を夢見て、何がしたいのか
まずは探してみよう・・・探してみようもっともっと深く。
そしてもしも自分を愛せたなら 他人を愛せるよ

一つ好きなとこを  自分に見つけたら
誰かのこと許せたり好きになれたりするんだって!

こんなヤバい大人になるはずじゃなかった
ひどく嫌いでもない。だけど好きじゃない。この感じヤバい。

なんか・・・なんかヤバいのだけは分かる
まずは自分、何者か知らなくちゃ・・・早く知らなきゃ。

平松愛理

屋根のない恋 (短編小説作BON)

古ぼけた屋根から、雨水が滝のように流れている。 いればいるほど、豪雨になっていくようだ。すでに由美の スカートの裾はびじょびじょだった。2月ってこんなに寒かったっけ。 由美はバックからスマートフォンを取り出す。19時56分を指している。 「8時になったら帰ろう。それ以上待っていたらここで徹夜になる。」 由美はそうつぶやいた。由美は昨日、キャンパスで卓との会話を思い出していた 確かに卓は、今日は授業は午前中だけで午後は部活もなくすぐ帰宅すると いっていた。今でもその言葉を信じている。信じていたつもりだった。 卓とのLINEのやりとりを見る。昨日までのたわいない会話と。 今日、由美が朝8時56分に送ったメッセージ。 メッセージはこう書いてある 「今日、渡したいものがあるから、17時に卓の自宅のすぐ前の 総合レクリエーション公園前の汽車の前のベンチ前まで来て」 そのメッセージには既読がついていた。・・・急な用事かもしれない。 裏もとっておいた。親友の英子だ。15時20分。 由美は英子のLINEを見る。「今、東陽町。東陽町まで卓と一緒だったから 少なくとも16時には卓は自宅に着くはず。」 「ありがとう」由美が打ったのは15時24分。ちょうど、由美が この場所に着いた時間だ。少し早いけど、早く来てくれるかもしれないと思って。 由美は料理は得意じゃない。だから買った。ゴディバのチョコレートを。 5000円は痛い出費だったが、手作りが上手じゃない由美の本気だった。 雨が降り出したのは18時頃だった。ちょうど由美の気持ちが沈んでいくのと同じ頃。 普通ならば、LINEの返信ならば、一瞬だ。 よく既読になっていて、すぐ返事なくて怒るのはダメだと、そんな話を聞いた。 だから、由美は我慢して待った。でも返信はこない。今日だけはすぐ返信欲しかった。 いや、こんな気持ちになるくらいなら、既読機能なんてほしくなかったのに。 長い髪が顔にまとわりつく。もう、雨なのだか由美の涙なのだかわからずにいた。 しばらく、スマートフォンを見つめた。無情にもスマートフォンは20:00と表示される。 ・・もう帰ろう。おなかすいたな。 「自分チョコか・・。」 由美は鞄からプレゼントを取り出して。びりびりやぶりはじめた。 そして中のチョコを1つ口に入れる。 なんともいえない味。どう表現したらいいものか。 傘ささずいってみよう。傘なんてないけど。 由美は豪雨のなかゆっくりと歩きはじめる。

屋根のない恋-平松愛理

このまま歩いてみよう屋根のない恋だから
傘ささず行ってみようきっと晴れてる場所まで

あなたの気持ち疑うなんて誰より
私が信じられないことだった
その心全部が向いてはないと知って
退くことのできる恋ならば
そんなのほんとの恋じゃない AH

ただただ傷つくだけの屋根のない恋だけど
どこまでも行ってみよう何があっても好きだから

雨やどりの雨はこ の町のどこより
なぜこの胸ただいて刻んでゆく
気がつけばいつからこうしているんだろう
ちょっとした言葉の切れ端で
ふとした仕草のひとコマで AH

どしゃぶりひとり往く様な屋根のない恋だから
雨のまま風のままに太陽を信じながら

このまま歩いてみよう屋根のない恋だから
傘ささずいってみようきっと晴れてる明日へ

平松愛理

アネモネ(短編小説昨:BON)

晴海は自室のパソコンをいじっている。晴海の表情は暗い。 晴海はお客様からのメールを読んでいる。

「今月はじめに、お宅のサイトで熊のぬいぐるみを購入したのですが いっこうに商品が届きません。もう商品はいいので、返金してくれませんか」

晴海はサイトの管理画面を開く。お客様の情報はあったものの、購入個数が0 となってエラーとなっていた。

晴海「今月はじめに不明のサーバー障害にあってサイトがおかしくなった日だ。 これはまずい」

晴海は急いで謝罪のメールと返金処理を急いで行う。 晴海は焦っていた、これで信用は全部失った。 信用回復にどれだけのお金と時間がかかるのか。

一連の処理を終えて、ぐったりとした表情で、居間に向かう。 おまじないとして、定期的に買っているアネモネの花が少ししおれて見えた。

ちょうど1年前、アネモネの花を買ってきてくれたのは信二だった。 晴海が笑顔になりますように。と買ったといっていた。

花言葉「君を愛す」だと信二はいった。

でも晴海はその花は 花言葉「希望・期待」と受け取った。 晴海には夢があった。それは輸入雑貨やぬいぐるみを通販で販売する ネットショップ。

アネモネの花が届いた日に、信二に云った。あたしは輸入雑貨通販サイトを 立ち上げるのが夢なの。と。

信二は少し表情を曇らせて云った。応援はしたいが、本当は君に側にいてほしい。

晴海は夢は眺めるものでなく、かなえるものと信二にいった。 夢を全力で応援してくれない、信二のことを臆病だと思った。

信二は、応援するよとはいってくれたもののなんかいいたそうだった。

晴海が忙しそうに、夢に向かって頑張る時間、信二はなんか冷めた目で見るようになった。 晴海の夢がとんとん拍子にうまくいくたび、信二との距離は遠くなっていった。

そしてネットショップが評判になって、収入が上がった頃、信二は晴海の側から 離れて行った。

悲しいとはあのとき思わなかった。同じ夢を見れないのだから仕方ないねと晴海は割り切った。 そう、このショップがつまずくまでは。

いいときばかりじゃない、ショップの状態が停滞に入ったそのタイミングで 今回の不明のサーバー障害。信用は失ってしまった。

晴海はため息をつきながら、惣菜屋さんで買ったサラダと煮物を口にする。 そして晴海はアネモネを見つめる。

アネモネの花言葉はいくつかある。今の花言葉は「はかない夢・薄れゆく希望」 晴海は「はかない夢」と呟いた。

昔、信二が云った言葉が、走馬灯のように頭をかけめぐる。 「夢は叶えたらただの現実だから」

確かに現実だった。でもいい現実だけではなかった。 昔の恋に今教えられる。

LINEが入った。母からだ。 「元気にしてる?送ったショウガ湯は飲んでる?元気になるよ。母さんはいつも あなたの見方よ」 晴海は涙を流し、ありがとうと返信を打った。

冷蔵庫から母からもらったショウガ湯の素を取り出し、ヤカンでお湯を温める。 晴海はショウガ湯の素をとかして飲む。

よしっ。

また、アネモネの花を見つめる。 今は枯れずにあればそれでいい。あたしらしい花を咲かしてみせる。

アネモネー平松愛理

アネモネの花が咲いた頃
あなたは私に言った
あそこに行ってはいけないよ
君は僕のそばでいい

アネモネの花が咲いた頃
私はあなたにいった
素敵だから手に入れたい
摘んで私のものにしたい

夢は遠いほど美しいのさ
手にしたらただの現実だから
そう言うあなたが臆病に見えた
眺めるだけの夢はいらない
私は叶えたかった
そしてあなたふり切って
独り触れた花
戻れなくなった

アネモネの花が咲いてから
二人は変わっていった
一緒に居てとても違った
同じ未来じゃなくなった

夢は心にあればいいのさ
手にした瞬間から過去になる
そう言うあなたが小さく見えた
あの日春の空にうろこ雲
今はビルが喰い込んで
何度目かの冬が来る
あの頃の花は
いつしか枯れた

手の届かない夢で今はいい
ただ枯れずにあればそれでいい
昔の恋に今教えられる
人は何か気づかされた瞬間
やっと生まれ変われる
格好悪くたっていい
私らしい花
咲きますように
私らしい花
咲きますように

平松愛理

友情(短編小説昨:BON)

三月は団地の一室の扉を開ける。玄関は暗い。三月は小さなため息を ついて、玄関の明かりをつける。「静かだな。この部屋」そう言うと 靴を脱いで、居間へと向かう。サラダまで作る元気はない。だから、 一人用のカップサラダをコンビニで買ってきた。三月はサラダをコンビニ の袋から取り出し、テーブルに置いた。上着を脱いで、冷蔵庫を開ける。 ほぼからっぽである。そうあまり買っていないから。ちょっと魔法のように ものが増えていないかなとふと思ったが、自分は今一人であることを思い出していた。 見覚えのないものを探そうとしても冷蔵庫にはなかった。

「タマネギと挽肉と卵だけはある。ピラフでも作ろう。」 三月は冷凍してあるご飯と肉と野菜を取り出し、調理を始める。 ピラフになりたいを口ずさみながら、フライパンを動かす。

そういえば、啓吾は調理がうまかったな。このピラフの作り方も彼に教わった。 そんなことを考えながら無心にしゃもじを動かす。ああ、そうか。 昨日疲れて、洗い物をしていなかったな。皿はフライパンでいいや。このまま食べちゃおう どうせ、一人なんだしいいでしょ。三月は自分で納得するように独り言を言う。

テーブルの上に濡れぞうきんをおいて、フライパンを置いた。これでいいや。食べちゃおう。 そこそこ啓吾のおかげで、料理はうまくなったが、孤独が三月の表情を暗くしている

。 三月はフライパンを皿かわりにして、ピラフを食べはじめた。そしてサラダも。 半分ぐらい食べたところで、ため息をつき、ぼーと前方を見る。1つのアイテムがあるのを見つけた。 マリンシャープスである。啓吾が好きだったすごく辛い香辛料である。三月はそれを手にとった。

2週間前まで、この部屋には啓吾がいた。玄関開けると、マリンシャープスが香った。 三月は辛いものが苦手でマリンシャープスには手が出せないものだったが、この匂いがすると 啓吾を思い出す。あの日は、豆乳スープスパゲティを作ってくれた。 そう、豆乳スープがピンク色になるまで、マリンシャープスをかけて食べていたね。

「僕はこのピンク色になったスパゲティが好きなんだ。食べてみる?」
「あたしは白いままでいいや。あたしには白の味がしっくりくるの」
「ははは。まあ、これは僕だけの嗜好品ってことか」
「でもこの豆乳スープ旨いね。そうそう、彼女できたんだって?おめでとう」
「ははは三月に言われると照れるな。最初、僕が居候しようとここに転がり込んだとき、 君はとても嫌そうな顔してたじゃないか。」
「そうだったっけ?・・まあいいや。そんな君にプレゼント。ショートケーキ買ってきたよ。」
「おお、ありがとう。辛いもののあとで、甘いものか。」
「私、甘党なんで。」
「そうだったね」
「いろいろあったけど、1年いろいろありがとう。助かったよ」
「それはこちらの方。洗濯や掃除、料理もしてくれていたし」
「またお互いの過去の恋バナもね・・夜更けして議論したりしたりして」
「そういう日あったね。ビール何本ここで飲んだか」
「まあせいせいするわ。合鍵を作ろうと思っていたけど必要なさそうね」
「男女の友情なんてあり得ないなんていうけど、うちらはそれが確立できたのは大きいね」
「そうだね。今日で、それもしばらくお休みかな?」
「そうだね、ここに入り浸っていたら、誤解されて振られちゃいそうだから」
「じゃ、啓吾の未来を願って。乾杯」
「乾杯。それと永遠の友情の握手」
「いいね」

二人は長く握手を交わす。

いけない。ピラフが冷めてしまう。三月はスプーンでピラフをすくう。 あれから2週間。長いようで短い2週間。 ふとラインの音が鳴る。啓吾かな?と思ったら、職場の同僚からだった。 少し期待した私が馬鹿だった。あれから2週間、啓吾からラインがない。啓吾らしいといえば 啓吾らしい。でも、当たり前のようにいた啓吾の存在が、いつのまにかあたしのなかで 大きくなっていた。あたしも啓吾に負けてらんない。幸せにならないと。

三月はマリンシャープスにめがけて独り言をいう。 ここに来るときは連絡して。冷蔵庫いっぱいにしとくから。

友情ー平松愛理

嫌そうな顔 君にして見せたけれど
本当はそうでもなかったんだよ
君の荷物が私の部屋に増えて
友達の約束ない夜にくること

君とはなしていると 普段を忘れて
ここが別の空間になるみたい
冷蔵庫 開け おぼえのないもの見ると
私は独りじゃない気分になる

恋愛じゃなくても 癒せるんだね
人ってやっぱりすごいんだね
君が彼氏じゃなくて本当によかった
だって終わることがないんだもの

不便だから合い鍵つくろうかなって
そんなこと思いはじめてた頃
君の荷物とここ来る夜が減って
そうしてとうとう君は恋を見つけた

誰もこなくなると 部屋は散らかるね
炒飯はフライパンがお皿になった
冷蔵庫には期限切れのままのもの
私は前よりもっと独りになった

さよならと明るく見送ってる
助手席に彼女を乗せた車
ポケットの合い鍵 渡さず良かった
だって誤解されちゃ 困るもの

恋は人の心全部さらっていくね
友情はあとまわし
だって君は来やしない・・・
来やしない・・・・・

彼女との生活慣れることに
君は忙しいだけ 変わってないよね
もし遊びにくるなら ちょっと電話して
空の冷蔵庫を一杯にしとく

平松愛理

あなたのいた夏

(短編小説 作BON)

組み立て式倉庫のようなだだっぴろいフロアに男性が2人、女性が2人 黙々と仕事をしているようだ。ようだ。というのは、男性は二人とも、 スマホいじって動画を見ているからだ。今日は日曜日、管理者は不在である。 男性らも夕方ぐらいまでは作業をしていたが、17:00も過ぎる頃になると もう真面目に仕事などしていない。それを横目に果歩はしらけたような 表情しながら、タブレット端末をみている。 果歩「これはもうバッテリーが寿命きているわね。バッテリーとりかえるかなんか しないとだめね」 優香「ああ、そうなんだ。じゃあ、私、梱包して、A便で送り返しちゃうね」 果歩「お願いします」 優香「了解、あ、でももう17:40分か、明日やろう。明日、もう帰ろうよ」 果歩「はは、定時まであと5分あるでしょ」 優香「果歩はいいじゃん、明日、代休でしょ」 果歩「そうね、今日は代理出勤だったからね」 優香「果歩は最近、プライベート忙しくなさそうだね。前、結構、なんとか交流会、 フェイスブックの?で、帰りばたばたしてたのに。写真もばしばしとってさ、 インスタとかあげてたのに最近どうしたの?」 果歩「ああ、なんかね、疲れちゃってね。元々、副業やる為に、写真やる人と繋がったけど いろんな交流会出て、なんか意味あるのかわからなくなってしまって」 優香「ああ、あるあるだね。友達を増やす為の交流。でも友達になっても関係は薄いみたいな で、人数が増えてチャンスはあまりなく、お金がかかるみたいな」 果歩「2,3人でいいんだよなーと思ったらめんどくさくなってきてさ」 優香「そういうわけか。最近、仕事も結構残業してるみたいだし」 果歩「一人家で、飲んでもね」 果歩のスマートフォンが揺れる。果歩は、スマホを見る。少しの間、果歩は固まる。 優香「ははーん。その2、3人からきたのかな。お疲れ様。私は帰り支度するわ」 果歩「・・・お疲れ様」 果歩のスマートフォンには友達からのメッセージが書かれていた。 「今日あの二人はあの店にいるよ」 果歩はゆっくりと「わかった、ありがとう」と返した。 しばらく果歩は動かないでいた。優香が声をかける。 優香「定時だよ。お疲れ様」 果歩「お疲れ様。」 無表情に果歩は優香にコトバを返す。優香は部屋をでていく。他の男性二人もスマホにイヤホンしたまま 帰り支度をして、無言で部屋を出る。 果歩はゆっくりと立ち上がり、帰り支度をする。そう、本当は副業は、実はあまり真剣に考えていなかった。 ただ、あの時、私は仕事を頑張ると思っただけ。忘れようとするだけの。 旧友からのメッセージに、心揺さぶられる。あの店。そう、この職場からあの店は歩いていける。 やっぱりあなたに逢いたい。いくらその恋が叶わぬものであったにしても。 果歩は荷物もって、倉庫の電気を消して、カードをかざす。そして外に出る。 今日は8月31日、まだ、外は明るかった。夏の終わり静かな夕方。 あの二人は必ずテラス席にいるはず。旧友からのメッセージで読み取った。 この時間ならあの通りならば、必ず、私を見つけられるはず。 計算しながら、歩く。店の前をゆっくりと歩く。 和美「あ、もしかして果歩じゃない?果歩ー!」 果歩「あ、あれ?和美?あ、晶哉さんも」 晶哉「果歩、久しぶり。ちょっと寄っていかない?しゃべろう」 果歩「あ、いいの?お邪魔じゃない?」 和美「全然」 果歩「じゃあ、失礼して」 果歩は指がかすかに震えてるのを隠して、テラス席へ行く。 逢いたかった。晶哉さん。さわやかさは変わらないな。 和美「あれ?今日、彼は?」 果歩「仕事」 晶哉「日曜出勤か」 果歩「そうなの」 彼なんかいない。架空の彼がいたほうが、あなたに逢えるからそうしてるだけ 心が叫んで、でも表情は変えない。 ウエイトレスが注文とりにきて、コーヒーを頼んだけどとても飲む気分になれない。 和美「ここはパンケーキが美味しいんだよね」 そういいながら、パンケーキを切って、晶哉の口の傍までもっていく。 和美がいなかったら、今私はどんな気持ちなんだろう。 和美が、今日晶哉とどこにいったのか、楽しそうに話す。 果歩は、和美の話を聞いているふりをして、1年前のことを想いだしていた。 果歩と晶哉が二人で海にいったときの夏の日。あの日のことを想いだしていた あの時、ビーチで手を繋いでいたら、こんな運命にはならなかったんだろうか。 そんなことを考えながら。 ドラえもんがいたら、タイムマシンにのって、運命かえることできたかもしれないのに。 楽しくて辛い3人のデートはあっという間に終わってしまった。 ここは閉店が20:00. ここから駅はすごく近い。電車に乗る方向が、二人が別々の方向だったらよかったのに。 そしたら、晶哉と2人になれたのに。笑顔で二人を見送る先には涙。 今夜はお酒を飲まずにはいられない。自宅の最寄り駅のコンビニで、チューハイを買って、 歩きながら飲む。 ふと空を見上げると、流れ星が流れてた。何の為の流れ星。流れ星は夢を叶えてくれるんじゃないの? 叶わない状態を諦めるなというメッセージ? 叶わない恋を諦めないのも恋でしょ?・・そう解釈してもいいの。 果歩はスマホで去年の夏に撮った、晶哉との海のデートの時の写真を眺めていた

あなたのいた夏 <平松愛理>

このOpen Cafeは偶然じゃない
二人はあの店だよと聞いたから
呼び止められる道わざと歩いた
あなたにあなたに会いたかった

「彼氏は?」ときかれ
「今日も忙しい」って言って
すぐ飲むワインは味がしない
こうゆう嘘は3人で居る為に
必要だとおぼえた

実らない恋を
あきらめないのも恋でしょ?
幸せはいつも捜すためにある
そう自分に言い聞かせる
風に乱された
彼女の髪をひと筋
直してあげるあなたの指の傍に私はいる

下りのホームには笑顔の二人
混みあう上りで手を振る私ひとり
ジェラシーとあなたに背を向け気づく
私は誰ともつながってない

あなたと歩いた夏
あの帰り道で手を
つないでたら違ってたかな
どうして人は過去を振り向くのだろう
もう手遅れな夢ほど

誰か気づいたの?
今のあの流れ星
闇の末にあるネオンが吸い込んだ
私の祈りを待たずに
あなたの窓から
地上の縁は見えない
こぼれてひとりまたたく気持ち
届きようもないけど

実らない恋を
あきらめないのも恋でしょ?
自分で作る幸せだってある
だって想いは殺せない
あなたと会える孤独なら
ひとりで抱えて生きていける
こんなに誰か想える気持ち
あなたが教えた恋という窮屈を
私は生きていく
しっかり生きていく

平松愛理

恋愛の光と影

(短編小説 作BON)

恋愛の光と影 お洒落なカフェテリア、たくさんの女子学生、男子学生が トレーにご飯やおかずをのせて、席に向かっていたり、 食事をして楽しんでいる。そうここは学食のカフェテリアエリア シルフ。皆が優雅に食事を楽しんでいるそのエリアで、卓美は 2人用のテーブルの椅子の所で、一人、ジャスミンのペットボトルを 開けて、一口飲むと、クロワッサン1つを食べている。 自分は心が優雅だから、いいのよという表情をしながら。 卓美はテーブルに1枚のプリントを出す。そして真剣に眺める。 瞳がトレーをもって近づく。あ、まずいと卓美はプリントを隠す。 瞳は、ここ空いてる?と聞いてきたので、5分間だけならと咄嗟に言った。 大丈夫よ。隠さなくても。だいたいわかっているから。卓美マネージャー そう瞳は言うと、もう片方の椅子に座った。 照れ隠しに、何が?といってみたものの、瞳は微笑んでいるだけだった。 そのプリントは、1年生の祐樹くんとのデート計画? 違うわよ。合宿のプリントよ。といってみたものの、顔が熱くなるのを感じた。 瞳はささやいた。卓美は、祐樹君と出逢ってから確実に変わったよね。 前はなにかにいつもいらいらしている目つきだったのが、最近優しい表情になった。 そ、そうかな?皆によく言われるけどそうなのかな。と目をそらしていう。 あ、デート資金の為に、お昼節約してるのね。あたし、応援するわ。 瞳は自分のトレーに置いてあるカップのポタージュスープを卓美の前に置く。 あ、大丈夫だよ。と、いってみたものの、瞳は立ち上がり、小さく、ファイト。と声を かけられて、無口になってしまった。素直じゃないな。あたし。 あ、祐樹君、きたから私、もういくね。と瞳はトレーをもって去っていく。 カフェテリアの入り口付近で、うろうろしている祐樹が、卓美を見つけて、大きく手を 振りながら近づいてくる。皆見てるよ、恥ずかしいなと思いながら、笑顔を隠せない私。 卓美マネージャー、お疲れ様です。ここ座っても宜しいでしょうか。といいながら、 頭を下げる。、内心私はびくびくしながらも、余裕を見繕ってどうぞ。という。 あー緊張してきた。手が震えてるのを隠しながら、プリントを祐樹に見せる。 今日は祐樹君にとって大事なお知らせ。祐樹君は今年1年生で、今後大学の水泳部の 未来を担っていく大事な人なの。だから、今週末、日曜日、須磨海岸にいって、 私マネージャと1対1で特訓するの。いけそう? 海ですか?一人ですか?真剣な顔で、プリントを見る。彼は何と答えるだろう。 ドキドキしながら回答を待つ私がいる。 ぜひ行きたいです。あ、でも交通費が。 交通費は、部が負担します。と咄嗟の嘘が出た。あたしって。 部が負担してくれるんですね。あ、じゃ、喜んで。あ、でも待って。確か、日曜日は他のメンバー に合コン行こうって誘ってきてたような。 あ、新田君のこと?彼はもう4年生でもう水泳部はほぼ引退状態な人だから。 そっちの方に行きたいの? あ、大丈夫です。特訓受けます。新田先輩には特訓受けるから出れないといいますね。 あ、ちょっと待って。卓美は頭抱える。 この子はピュアっていうか、この意味わかっていないんだろうな。そんな君が好きだけど。 どうしたんですか?頭痛いんですか。薬ありますよ。 大丈夫、大丈夫よ。新田君は私からいっておくわ。祐樹君は言わなくて大丈夫。 じゃ、他のメンバーにはいっていいですか。 それは、全部、マネージャーの私の仕事だから。大丈夫よ。 わかりました。祐樹は笑顔で答える。その笑顔見て内心ほっとしながらも心配事が増えたと思った。 ばれたらどうしよう。この子、デートとは気づかずに、誰かに言ってしまうかもしれない。 あーもういいや。ばれたらその時はその時だ。よし。でも鈍感な君に一言いっちゃおう。 あたしはね、祐樹君のこと見ていたいの。 あ、嬉しいです。あーわくわくするな。どんな練習メニューをやるのかな。 あーもう、とことん水泳鈍感バカんんだからもう。 卓美は瞳がくれた、コーンポタージュを飲む。祐樹は黙って卓美を見る。 祐樹くん、お昼食べた? うん。脂身のない鶏肉と卵とプロテイン飲料。 いつもそんなんじゃ、お昼楽しくないでしょ。 卓美は鞄からシュークリームのスイーツを取り出し、祐樹に渡す。 あ、1つは多いんで、はんぶんでいいです。そう? 卓美はシュークリームを半分にちぎって、祐樹にあげる。 祐樹は嬉しそうに食べる。この笑顔がたまらなく好き。 でもあたし、釣った魚に完全に餌あげてるかも。嬉しさと困ったが交差する。 日曜日の須磨海岸は、雲が多いけど日は照っていた。まるで、嬉しさと不安の 両方の気持ちを表した私の気持ちを表すように。 彼はこれはデートと自覚して来ていないかもしれない。デートと知った途端 怒ってかえってしまうかもしれない。着替えてくるといってかえってきた君の姿は 水泳の練習にきました、そのものだもの。 今日の練習メニューはどんなのですか?と聞くから、私は心決めていった。 今日のメニューは、私に水泳を教えること。 はい?ととぼけている頬に向かってキスをした。 当然ながら、彼は硬直している。 私はシン呼吸しながらいった。 私は今日限りで大学の水泳のマネージャーを辞めて、君のマネージャになります。 ・・僕のマネージャになってくれるんですか?ありがとう。 でも、僕は水泳しかやっていないから水泳しかわからないかも。 大丈夫。そういうと思った。 あたしは、ずっと、こんな気持ちが続いていくんだろうな。 あたしはあなたと出逢ってから、ずっとこんな気持ちだもの。

ー恋愛の光と影ー(平松愛理)

あの時 君と出会わなければ
どんなに世界はたいくつだったろう
君と話さなければ
すべての悩みは 存在しなかったのに

アリとキリギリスでいうとしたら
全くキリギリスだよ
君の笑顔がどうしても見たくて
バイオリン弾き続けてる
いつか弦が擦り切れて
メロディのない冬が来る
恋はまるで光と影
君を想うほどつらくて楽しい

あのまま 君を知らなかったら
ずっと自分が一番だったろう
君を好きにならなきゃ
もっと毎日を楽に過ごしていたのに

最近 目つきがやさしいねって
周りに言われるけど
わずわらしい人間関係よりも
君のことだけみていたい

そばにいて欲しい君の
幸せ君にしかはかれない
恋はまるで光と影
プラマイゼロと知ってても割り切れないよ
幾度も 恋はしてきたか らね
Easyに愛誓うヤツは嘘っぽい
君とずっと一緒の未来の
一つ二つ誓ってくれていいのに
あの時 君と出会わなけ れば
どんなに世界はたいくつだったろう
君と話さなければ
すべての悩みは 存在しなかったのに

平松愛理

待ってもいいよ

(短編小説 作BON)

狭い空間にパソコンが4台となりあわせに並んでいる。瑞希は、マウスを動かし、 自分の動画を再生する。よし、と小声でいい机にある缶コーヒーを飲み干す。 机においてある、スマホが振動する。 瑞希はスマホをみる。涼介からのラインである。 瑞希はラインを読む。 今日、夜暇?俺と表参道歩かない?いつ帰ってくるかわからない人のことは忘れてさ。 瑞希はため息をついて、ささっと、返信する。 今日、残業。瑞希はちょっと荒くスマホを机においた。瑞希は動画を眺める。いや、もう頭の中は、 仕事のことを考えてはいなかった。隆二のことで頭がいっぱいになっていた。 恐る恐る、今一度、瑞希はスマホを手にとる。 そして、下方にスクロールした。隆二のところで手がとまる。 日付は2016年12月15日となっている、もう1年連絡しあっていない。 隆二との会話履歴を読む。そう思いだした。彼の気持ちを確かめる為に、 敢えて自分からラインをしないでいたことを。 いつ帰ってくるかわからない人のことは忘れてさ。亮介のこのLINEで気づいた。 気持ちが鮮明に戻ってきた。

社長の江崎幸助が、部屋に入ってくるなり、瑞希に話かける。 どう仕上がった?。冬なのに、ラフな姿で珍しい社長だ。 瑞希は慌てて、スマホを置く。「あ、できてます」 「見せて」社長はいうと、再生されていた、動画をもう一度最初から流す。 「・・・・・ん。悪くないね。さすが瑞希さんは仕事も早いしセンスもいい。 これだったらお客さんに満足してもらえるだろう」 瑞希は微笑んで、「ありがとうございます」と、気分を隠す。 時計は15時を回っていた。江崎幸助は腕時計を見る。 今日はもういいだろう。え?と瑞希は社長を見る。 最近、残業続きだったろう。うちは成果物裁量性を重んじる。 今日はもう、かえっていいよ。あ、給料は普通に出すから気にしなくていいよ。 私は今日、これをお客様に納品しにいく。

え?今日、もう帰っていいんですか? 瑞希は心の中で喜んでいた。もう気分は仕事ところじゃない。 帰っていい?という言葉を聞いて、となりの部屋から、男が入ってきた 俺もかえっていいの?社長。社長の表情は変わる。 聞こえなかったか?うちは成果物裁量性だ。田中さんは自分の納品分は 終わったのか?田中さんはちぇっといって別の部屋に戻る。

瑞希は帰る支度が整って、待っていた。 納品物のデータはメモリーステックに入れておきました。 そういって、瑞希は江崎幸助に渡す。

じゃ、かえっていいよ。お疲れ様。うちは5人しかいないからな。 こういうことができるのは小さい会社だけだよ。

瑞希は軽く会釈して部屋をでる。 ビルを出て、瑞希は自動販売機で缶コーヒーを買う。 今はやりの、コーヒーペットボトルは目もくれず。瑞希のスタイルは 変わらない。そして、左手に缶コーヒーを持つ。何故かこの癖がいつのまにか 身についてしまったようだ。そう、これは隆二のくせであった。

瑞希は鞄を左肩にかける。そして右手で、先ほどの隆二のラインを 見つめていた。書こう。

瑞希は一度、缶コーヒーを左ポケットに入れて、隆二にメッセージを送る。 「渋谷にいつ帰ってこれますか?」

すぐに返信は来ないだろう。だって隆二は外国にいるのだから。

瑞希はスマホをしまい、缶コーヒーを左手に持って、歩き出す。 風が強い日だった。目の前で、コンビニのビニール袋が空中で くるくる舞っている。そう、まるで、それは私の状態。 仕方ない状態のなか、自分が空中で振り回されている。 自分ではどうしようもない、この状態。

瑞希は歩きながら、1年前、最後に隆二に会ったときに言われた言葉を 思い出していた。「会社の命令で俺はアジアを回ることになったけど、 必ず、渋谷に戻ってくる。この任務は誰もやりたがらないから、報酬はいいんだ。 必ず戻る。資金貯めて戻ってくる。帰ってきたら、俺はその会社を辞めて お前と結婚して、お前と会社おこそう。そうお前が好きな動画制作の会社さ それまで、瑞希は今の会社で腕を磨いてくれ」 「・・・いつ戻ってくるの」 「2年だ。2年間の辛抱だ」

あれから1年経った。あと、1年のはず。私は敢えて彼の言葉を信じ 弱音はかずに、LINEを送らずにいた。わからない。外国で、いい人と 暮らしているかもしれない。そんな気持ちが走って たった今、ラインを送った。

109が見えてきたところで、瑞希は、あることを思いついた。 予定のない帰り道、彼と過ごした思い出場所めぐりにいって自分の気持ち を確かめること。そして、彼の好物だった、渋谷のたこ焼き店で、たこ焼きを 買って、まずは、隆二とよくいった代々木公園に行くことに決めた。

公園では、親子ずれや若いカップルでにぎわっていた。瑞希はベンチを見つけ 先ほど買った、たこ焼きを食べながら、人間観察をした。 そうそう、このベンチだった。隆二がここで人間観察をしようってボーと眺めて たこ焼きをたべたっけ。春のあたたかい日だった。 ふと、カップルが自転車に乗って追っかけっこしている。 あたしたちもやったなと思って見つめていると、なぜか涙が流れてきた

瑞希は秋に渋谷の東急ハンズで買い物して、彼が荷物もってくれたことのことを 思い出していた。また、瑞希は渋谷に戻り、今度は東急ハンズへと向かう。 あの時は家に観葉植物を飾ろうという目的で、木材用具を買ったっけ。 瑞希はその売り場へと向かう。そこにはまだ同じ木材が置いてあった。 ただ違うのは隆二がいないということだけ。

外が暗くなっていた。ちょっと寒い、瑞希はマフラーを巻いた。 瑞希は隆二と夏に神宮で花火見た日のことを想いだして、表参道から あの日のように、神宮まで歩いた。あの日は二人とも、浴衣来てた。 今は12月、表参道はイルミネーションが街を輝かせていた。 心の中で瑞希は花火を見た。

いろいろ見て歩くうち、いつの間にか渋谷の街は0時を回っていた。 そこは空き缶とギターの国、路上で歌う、シンガーを2人で眺めていたっけ。 ふと、隆二がそこにいた気がした。でもいない。いないんだよ。 まだ涙が流れてきた。渋谷の街は雪で包まれていた。

自分の気持ちを確かめる為に、隆二と過ごした季節を回って気づいた。 まだ、あたしの中にはあなたがいることを。 もう帰ろうと、スマホを見た。 隆二からの返信があった。

「あと1年。1年で必ず、渋谷に戻ってくる」

瑞希は涙を流して、返信をうった。

「待ってもいいよ。」

<待ってもいいよ><平松愛理>

予定のない帰り道 雑踏から空みたら
星があなたより近くにあった
缶コーヒー左手に もつこのくせ 
うつったまま
それが唯一 あなたがいた証拠

路上の駄菓子の 袋が風に
逆らえず 舞うのを見てる

ねえねえ あなたから 
私はいなくなったんだね
だけどまだ私にあなたは ずっといるよ
あと一回ずつなら待ってもいいよ
夏の花火と 春の雷と 秋の北風と 雪

午前零時の渋谷は 空き缶とギターの国
駅降りてそこはアジアのどこか
後姿があなたに 似てる胸を抱いた夜
翌朝私をやめたくなった

あなたを好きで いようとするほど
自分を嫌いになってく

そうね 待つことを 
やめれれば楽になれるのに
ひとりぼっちもこんなにさびしくないはず
あと1回ずつなら待ってもいいよ
夏の祭りと 春の公園と
 秋の夕暮れと 雪

あの大きい手を 握ればどんな
人混みも まっすぐいけた

なんど ぶつかっても
 自分の足で歩きたいよ
これからは好きなことをもっと
 好きになる
でも1回ずつなら待ってもいいよ
夏の夕立と 春の霧雨と
 秋の枯れ葉と 雪

平松愛理

大人になったら

大人になったら(短編小説 作BON)

だだっ広い空間にブースで囲まれたエリア。恵里は ふと、向かい側のブースを見る。そこでは葉子が、 パソコンの画面をみながら、ヘッドフォンに話しかけて、なにやら打ち込んでいる。 薄く塗られた、葉子のルージュがしなやかに動き、あざやかに見えた。 全身、パープルで包まれた葉子のその姿が、まぶしかった。恵里は、自分のブースの方を向き、 パソコンでインターネット閲覧画面に切り替える。 画面の中に映る、脚本コンテストグランプリの一次合格者の名前を もう一度眺めるが恵里の名前はなかった。どうせ私なんか。と呟いて画面を閉じる。 仕事の画面に切り替わったその画面は無機質に 表示される。葉子は、入力が終わり、ヘッドフォンをとって恵里の方へ向く。なにかあった?葉子は いつもしゃきしゃきしている。 なんでもない。恵里はそう答えると、ゆっくり立ち上がり、管理者の方向に向かう。

小川さんすみません。と恵里がいうと、書類に判子を押しながら、 どうしたという。小川はいつも、遅くまで残業している。 その彼に逆らうように、言った。すみません。先ほど電話がなり、 祖父が亡くなった知らせがきたので、明日、明後日休みます。 そういうと、恵里は下を向いた。小川は早口でいった。そうか、 わかった。じゃあ、あべかんに記入して、チーム内にメール送っておいて。 気おとさんようにな。彼の言葉は優しい響きだったが、恵里には 無機質に聞こえる。もう、6時になる。今日は早く帰っていいよ。 戻ろうとする恵里にこの言葉が聞こえたので恵里は振り返りざまお辞儀をした。

恵里は自席に戻り、パソコンで、休暇申請をする。 そして休暇通知のメールを送った。そしてなにかに 逃げるように帰り支度をする。 葉子はその様子に気づいて、恵里に話しかける。 身内の方なくなったんだって?気を落とさないでね。あなたの案件きたらやっておくわ。 紫に身を包んだ葉子は聡明すぎて、恵里は少し目をそらしながらいった。 ありがとう。と。どうせ葉子にはこの嘘なんてすぐ見抜くだろうと思いながら。

ビルをでても、いつものように家にまっすぐ帰る気にはなれなかった。 同棲中の保治さんを心配させるかなと思いながら、いつもの方向とは逆の方向に 歩きだした。ふと、近くにコンビニがあったので 缶ビール二本とつまみをかった。おやじみたいと 呟いたものの声は空へと消えていった。

ふと、公園をみかけ、ひとりベンチに座る。 缶ビールをあけて、飲む。ため息をついて見上げた 空は少し雲っていた。そして通る曇にたまに隠されながら現れる、 淡い色の三日月。なんか今の心境に フィットすると恵里は感じていた。 そしていかの乾きものの袋をとりだしていたときに あってはいけない人にあってしまう。

あれ、あれ?恵里さんじゃない? はっと気づいて見上げたら、先ほど働いていた、 紫で身を包んだ葉子だった。 なにかを隠すように葉子にいった。 あ、あ、ビール飲まない?つまみもあるよ。

仕事で見る、いつもの葉子とは違い、穏やかな 表情で、じゃあ、少し付き合おうかな。という言葉がかえってきた。 焦るように、葉子に缶ビールを 差し出すと、葉子は受け取りゆっくりベンチに座る

はやく帰ってあげないと、保治さん心配するよ。 葉子はそういうと缶ビールをあけて、一口飲んだ。 この時点で恵里は負けたと思った。完全にずる休みがばれたと悟った。 けど葉子はそれを言わない。

照れ隠しで、いかのつまみを葉子に差し出す。 葉子はちょっとつまんで口に入れる。 少しの間、沈黙が続く。なんとかしようと恵里は 話し出す。ちょっと前に、フラワーショップ 開きたいって葉子ちゃんいってたね。どうなった? 葉子は自信の表情でいった。明日ね、FBで知り合った仲間と フラワーアレンジのワークショップやるの。 今の仕事でだいぶお金貯まったし、もうそろそろ次のステップいけそう。

ちょっと悔しいと思った恵里は言い返してしまう。 私もね、今回のコンテストの一次を通過してさいさきいいの。 葉子は微笑んでいった。お互い頑張ろうね。 そうだね。と笑った恵里は心の中で空虚だった。 私はなんて大人げないんだろう。 葉子は握手を求めてきたので、強く握手した 私はなんで、形だけ大人ぶるのだろう。 葉子はビールを飲み干していった。

ごちそうさま。さて、早く帰ってあげな、 保治さん、あそこで一人しょんぼりブランコに 乗っているおじさん状態になってるかもよ

二人は笑うと、葉子は立ち上がり、去っていった。 一人になった恵里は、スマホをとりだし、昔、 撮った恵里の映る動画を見た。 そこにはまだ中学生の恵里が将来の夢を語っていた。 中学生の恵里はきらきら輝いていた。

<大人になったら 平松愛理>

大人になったら すごい満月より
少し欠けてる月が安心なの
大人になったら 晴れわたる空より
曇ってる方がちょうどいい日がある

大人になったら 元気な人よりも
たまにしょげる人といるとほっとする
大人になったら 足元遠くなり
健気に咲く花に目が届かない

大人になったら 夢見続けること
いつしかどうせってあきらめていく
大人になったら いい人になる努力が
楽に生きていく努力に変わるの

大人になったら  誰かの心に
触りたくても触れなくなるの
大人になったら 欲しいもの欲しいと
すぐ言葉にしては大人げないの

大人になったら とても泣きたくても
こらえておまけに笑ってたりする
大人になったら
何だって出来ると
ずっとすごくすごく憧れてた

私 いつ大人になっていったんだろう
私はなぜ大人になりきれなかったんだろう

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