楽次ースピンオフ愛理 B

2016年作

平松愛理

楽次ースピンオフ愛理 B

平松愛理

楽次ースピンオフ愛理 B

(主人公の彼女として愛理さんが登場) コーヒ屋(昼)     徳島楽次(25)はスマートフォンでYOUTUBEを見ている。動画には 苦梅次郎(26)が動画で徳島に向かって叫ぶ。

苦梅「お前の彼女は俺が預かった!」

徳島はスマートフォンを乱暴にテーブルに落とす。

楽次「なぜこんなことに!」

二日前アパートの一室(夕)

部屋は綺麗に整頓されパソコンラックにはパソコン、タブレットそして怪しげな箱が置いてある。 徳島楽次(25)はスマートフォンのエバーノートを使ってネタを書き込んでいる。 楽次「あと三つのネタ。来週分のネタ三つ」

チャイムが鳴る。楽次はドアフォンをとる。モニターを見る。

楽次「ああ、卓二、入れよ」

足場卓二(25)が入室する。

卓二「氷とレモン買ってきたぞ。お、でたなサラリーマンYOUTUBER」

楽次「撮影時だけだよ」

卓二「まあお前のトレードマークだからな。正装して投稿するのは。ピンクの背広」

楽次は背広をはたく。鏡を取り出して 顔をよく見ている。ウエットティッシュで顔を拭く。卓二は水を汲む。

卓二「女じゃねーんだから。メイクかよそれ」

楽次「おお、メイクか。それをネタにして何かやるかな。ぐっ、アイデア!」

卓二「ブスが超かわいいになるやつか?お前顔、普通だからインパクトないぞ」

楽次「やってみないとわからないさ。俺っちには500万のファンがついてる」

卓二「なあ、お前本当にやりたいことそれなのか? 確かにお前が有名になったおかげ で俺にも好都合になったがお前のやりたいのはくだらない動画なのか?」

楽次「くだらないって何だよ?」

卓二「うちら二人バンドだろ? 音楽はもうらやないのか? 一年前は俺らは寝ても覚  めても音楽の活動だったろ」

楽次「俺っちのファンがそのYOUTUBEあげた音楽部門で三曲が視聴回数一〇〇万 回超えたじゃん」

卓二「確かに有名なった。しかし一年前のお前の夢は武道館ライブだったろ? それで いいのかお前は?」

楽次「ああ、つまり俺っちが注目浴びてるから妬み?」

卓二「そんなんじゃない。音楽活動最近やってないだろ。YOUTUBERもいつまで 稼げるかわからないだろ」

楽次「だからこそ稼げるうちにやっている」

卓二「毎日、オリジナルソング投稿するのはどうだ? 俺はストック三〇〇あるぞ」

楽次「そのうち考える」

卓二「別に妬みやエゴじゃない。昔は一発屋、今は一瞬屋だ。好きな分野やったらいい」

楽次「わかった。とりあえず今日はこれだ。お前今日映れよ」

卓二「映ったら俺もやらなきゃいけないだろ? やだよ。そんな得体のしれないやつ。 死んだらどうすんだ?」

楽次「わかった。じゃあ一人でやるよ。画面 セットするの手伝って」

卓二「わかったよ」

卓二はIPAD持って固定させる。

卓二「こうか? もうちょっと後ろか」

楽次は鏡取り出し見ている。

卓二「とんだナルシストだな? 今日これからのたうちまわるんだろ?」

楽次「鼻毛とか出てたらあれだから」

卓二「アホか。それより吐いてもいいようにエチケット袋は?」

楽次「ああ、机の引き出しにある。取って」

卓二「こっちのが先だろ、普通」

楽次「わりいわりい」

卓二「救急車の用意は?」

楽次「ウルトラデスソースがあれぐらいだから大丈夫」

卓二「ほんとアホだな」

楽次「云うなよ。これでも緊張してんだ」

卓二「なんだ。びびりか。じゃやるなよそんなもん」

楽次「いや、他のYOUTUBERはやっている俺っちもいかなかやならん。じゃあやるぞ。」

楽次は録画の準備する。撮りはじめる。

楽次「だ、だ、だった、ひーひー。楽次です。今日はかなり緊張しておりますよ。なんで かというと、そう。これから私やることは私が現在日本で購入できる辛いもの! な んとチャレンジするからです。あー緊張。その名も、だ、だ、だった、ひーひー。ざ・ソース」

楽次はパッケージを録画器に近づける。

楽次「注意書きが書いてあります。ふざけて大量に使用しないでください。ふざけて、 プレゼントしないでください。そして、身体に異変が起こったとしても責任は取りま せんと書いてある。だっだ、ひーひー。俺っち汗が止まらないす」

楽次は箱を開けて、瓶を見せる。

楽次「さあ、これ、やばいっち。ひー。千年の歴史を思い浮かべそうなパッケージ。他 のYOUTUBERもいっていましたが、このマニキュアを塗るような。・・」

楽次は蓋をあけて臭いをかいでみる。

楽次「やばい臭いはしませんね。逆に怖い」

楽次は一度閉める。

楽次「まあ、これに関して辛さを云っておくと日本で売っている一番辛いデスソースは 10万スコビル。これ辛さを示す値なんだ って。そしてこれは710万スコビル。何 倍かお分かりですね」

楽次はまた蓋を開ける。

楽次「世界一の辛さではないですが、私が入手できる、一番のものです。このチャレンジは他の  YOUTUBERさんいろんな方がチャレンジされています。だから、俺っちはこの上をいかなければなりません。  この液体を5滴スプーンに垂らして、原液のまま一気に舐める。まだ日本でそのチャレンジャーをみていません。  あーどきどきしてきた。デスソースであれだろ? いや、いきます」

楽次はスプーンを出して、その液体をスプーンに垂らす。

楽次「だっだ、やばいよ。やばいやばい。病院いきそうだったら、みんな119番通報 してくれ。うわっこの色! 待って」

楽次はレモンと牛乳と氷の塊を持ってくる。そして慌てるようにエチケット袋も持ってくる。

楽次「すごい、びびりですが、まだ死にたく ないので。レモンは辛さに効くというから」

楽次は大きく深呼吸する。

楽次「さあだっだっひーひー。楽次行きます」

楽次は一気にスプーンを舐める。

楽次「お? おお? おおお! うおお」

楽次は必死で首を押さえる。

楽次「れ。・・れ」

楽次は目の色変えてレモンをまるかじりをする。

楽次「ぜ、だめ」

楽次はしゃっくりが出始め止まらない。

楽次「お? う? うっ、うっ、うっ」

楽次は涙目で牛乳を一気のみする。

楽次「き、か、・・ない」

楽次は少し足をばたばたしながら氷の袋あけて、ほおばる。

楽次「い、あぐ」

卓二が思わず声出す。

卓二「おい、救急車呼ぶか?」

楽次「ビデオ、とめ・・て。あとで編集」

楽次は床に倒れこむ。

卓二「おい、大丈夫か、救急車呼ぶか?」

楽次「呼ばなくていい。少し落ち着いてきた」

卓二「なあ、楽次。本当にそれやりたいことなのか? そこまでしてやることなのか?」

楽次「このチャレンジはいつかしなければならない。人気YOUTUBERの宿命だ」

卓二「わからんな 金の為とはいえ、やっぱり音楽やったほうがいい」

楽次「ネタなくなったらやるよ」

卓二「あきれた奴だ」

楽次はゆっくり立ち上がる。そして氷をほおばる。

卓二「回復したか」

楽次「いや、あと10分時間くれ。体が落ちついてきたら」

15分経過。楽次は氷袋を持って椅子に座る。

卓二「用意はいいか」

楽次「いいっち。撮って」

卓二は再び撮り始める。

楽次「・・まじ死ぬかもって思った。痛いなんてもんじゃない。これ今、しゃべれてい るの奇跡。ほんと。なんてもん作るんだ?よかった死ななくて。15分のたうちまわ っていた、それずっと流すのは見苦しいので編集しました。でも5滴いったぞ。薄め てないぞ。だ、だ、だ、ひーひー楽次ひーひーどころじゃないが、これマネしないで ください。ほんと死にます。俺っち、自分で辛いの強いと思ってやったけど、これ命 あぶない。伝わってる? 伝わってない!  この量はあぶない。ざ・ソースでした」

卓二「終わりでいいか」

楽次「ああ」

卓二「落ち着いたら、ファミレス行こうぜ。ちょっと話し合おう」

楽次「ファミレスはいいけど、音楽は今考えてないぞ」

卓二「いいから。いくぞ」

楽次「これ編集して投稿してからね。30分待ってくれよ」

卓二「なら俺も手伝う」

ファミレス(夕)

楽次と卓二はスパゲティを食べている。楽次がタバスコをかける。

卓二「お前は懲りない奴だな。さっきあんなに辛いもの接種してそれでタバスコか?  俺なんかもうしばらく見たくもないけどな。辛いものなんざ」

楽次「あれ比べたら、タバスコなんてど甘いぐらいだよ。どちらかといえば、すっぽいだけ」

楽次がスマートフォンを取り出す。自分の投稿した動画を見る。

楽次「よおし。ようし投稿1時間で100万突破だ。これは久々にいくぞ」

卓二「本当にそれでいいのかお前」

楽次「満足」

苦梅次郎(26)がファミレスの入り口のドアを開ける。

店員「いらっしゃいませ。おタバコは吸われますか」

苦梅「吸う」

店員「かしこまりました。こちらにどうぞ」

苦梅は店内を歩く。楽次と目が合う。

苦梅「てめー。1時間で100万いったからって粋がってんじゃねーぞ。どうせ偽物だ ろ。あの動画。ケチャップとかじゃねーの? あんなんで稼いでとんだ詐欺師だな」

楽次「なんだと? ひがみか。 100万の動画1本達成ぐらいのひよこは黙ってろ」

卓二「あんな雑魚相手にすんな」

苦梅「胸くそ悪い。別の店にする」

苦梅は不機嫌そうに出ていく。

卓二「 まあ気にすんな。それより一歩先を考えろ」

楽次「まあ後でな」

コーヒーショップ(昼)

楽次はコーヒーを飲みながら、スマートフォンをいじっている。目黒愛理(25)がコーヒーをもって楽次のテーブルの相席に座る。楽次は驚く。

楽次「は?」

愛理「あなた楽次でしょ? あたし愛理だよ」

楽次「・・愛理?」

楽次は困った顔をする。

愛理「中学の時の同級生だよ。覚えてないの? 中学の時、告白してくれたじゃん」

楽次「あーあー。あの時の。愛理。俺を振った。・・なんだよ。なんか俺っちに用か?」

愛理「あの時はお互い若かったからね。のりで振っただけなの。でもずっと後悔してた」

楽次「ふーん。で、お前、今何やってんの?」

愛理「IT会社の経理で働いてるよ」

楽次「今日は仕事じゃねーの? あ? 今日は日曜日か」

愛理「そう、今日休み。何やってんの?」

楽次「・・いや、俺っちはちょっと・・」

愛理「だ、だ、だ、ひーひー楽次です」

楽次「え? なんで知ってんの?」

愛理「あなたもう有名人でしょ? すでに」

楽次「ああ、そうさ、500万人の人が知っている」

愛理「こんな風になるとは思わなかった。すごいね」

楽次「なんだ、俺っちに近づいて金をとろうってか?」

愛理「私は素直にすごいと思ってる」

楽次「まあ、すごいといっても毎日ネタ探しさ。なんかいいネタない?」

楽次はコーヒーをすする。

楽次「にげえ」

愛理「そんなのへじゃないでしょ。昨日の見たよ」

楽次「見たの?」

愛理「私も登録者だから。すごいじゃん、まだ17時間しかたっていないのに200万ビュー」

楽次「昨日は死ぬかと思ったよ」

愛理「称賛のコメント結構あるよ。侍魂見たとか。まあ、荒らしもいるけどね」

楽次「妬む奴もいるものさ」

愛理「そう思う奴はそう思わせておけばいいじゃん。すごいよ。楽次」

楽次「そうか?」

愛理「あれって本当に稼げるものなの?」

楽次「話せば長くなるが、年収5000万は稼げてる」

愛理「尊敬しちゃう」

楽次「お金に目くらんでるとちゃうか?」

愛理「私が尊敬してるのは、毎日投稿する。自分への厳しさ。それを換金できるすごさ」

楽次「ネタ探しはいつでもしてるさ」

愛理「あたしもネタ探ししてあげようか?」

楽次「ちょっと待て。お前、彼氏とかいるんだろ? 結婚とかしてたりしない?」

愛理「彼氏、募集中。そして楽次にひそかに想いを」

楽次「もうひそかじゃないじゃん。いい年して誘惑するなよ。俺っち困るだろ」

愛理は楽次の唇にキスをする。

楽次「・・お、お前・・」

愛理「あたしは本気だよ。付き合ってください」

楽次「・・俺っちでいいのか。お前。確かにビデオで彼女募集中っていったことあるけどジョークで。でも俺ニートだよ」

愛理「YOUTUBER、立派に稼いでるよ」

楽次「そ、それはそうだけどさ」

愛理「付き合ってくれる?」

楽次「いいよ。ああー俺っち、ネタ考えてたのにとんじゃったよ」

愛理「ネタぐらい考えてあげるわ。私は実はアイデアレディなのよ。これでも」

楽次「本当か?」

愛理「例えば、今、コーヒー飲んで苦いっていったよね。じゃあコーヒー瓶ごとボール にかけて一気に飲んでみたら?」

楽次「おお、気づかなかった」

愛理「そこにカラオケ屋あるじゃん。女性の曲をキーを一番上にあげて歌ってみたら?今日のネタそれ」

楽次「おお! いいな! そうしようか」

愛理「思い立ったら吉よ。カラオケ行きましょう」

楽次「本当か? 一緒にデートか?」

愛理「もちろんよ。あなたは私を久しぶりに見てると思うけど、私はYOUTUBEで あなたを毎日見てるから」

愛理は立ち上がる。

楽次「コーヒー飲まなくていいのか?」

愛理「あなたにあげる。飲んで」

楽次はアイスコーヒーをストローで一気飲みをする。二人はコーヒー屋を出てカラオケ屋へと向かう。

楽次「わかってると思うけど、俺っち撮影をしている」

愛理「知ってるよ」

楽次「いや、俺っちはいつも映るからいいけどさすがに出演しないでしょ?」

愛理「いいよ、出ても」

楽次「正気か? 俺っちの登録者500万いるんだぞ。一気に有名人になるぞ」

愛理「楽次の彼女になった愛理といいまーす」

楽次「まじ、大丈夫?」

愛理「光栄よ。付き合っていく楽次となら、有名になっても」

楽次「ようし。じゃ、乗り込むぞ」

二人はカラオケ屋受付に行く。

店員「いらっしゃいませ。お二人ですか? 何時間ですか?」

楽次「1時間で」

愛理「え? 2時間にしようよ」

楽次「撮影はそんなに時間をかけない」

愛理「終わったら普通にデートしよう」

楽次「あ、なるほど、それもいいか」

店員「2時間で宜しいでしょうか?」

愛理「宜しくお願いします」

店員「お名前書いていただけますか?カード持っていますか?」

愛理「あ、あたし持ってます。これでいいですか?」

楽次「よく行くのか?」

愛理「よく一人カラオケするのよね」

愛理はリストに名前書く。楽次はうつむいて目立たないようにしている。

店員「ありがとうございます。では205号になります」

愛理「大丈夫です。楽次ちゃんいくよ」

楽次「ちゃん・・か。俺っち恥ずかしいや」

2人はエレベータに乗る。

愛理「明日も同じ時間でコーヒー屋で」

楽次「ん? 明日もデートしてくれるのか?」

愛理「できるだけ毎日一緒にいたいの」

楽次「わ、わかった。14時にコーヒー屋で」

愛理「ああ、よかった。これで安心して遊べるわ」

二人はカラオケルームに入る。楽次は 鞄からビデオ固定の器具を設置する。

楽次「ちょっとそこに座ってみて」

愛理が椅子に座る。

楽次「よし、これでいいな」

愛理「楽しみだわ」

楽次「早速はじめるよ」

楽次は鏡取り出し身なりを整えて録画ボタンを押す。

楽次「だ、だ、だ、ひーひー、楽次です。今日は重大発表があります。これまで俺っち 楽次は25になるまで彼女いなかったんですが俺っちにも春が来ました。ひーひーだっだっ。」

愛理「彼女の愛理です。宜しく」

楽次「さあ、春が来たということで今日は、カラオケ大会。それも普通のカラオケじゃ ありません。女性アーティストの曲のキーを一番高くして歌うというきわもの企画」

愛理「楽次ちゃん。うまく歌ってね。西野さんのトリセツ歌ってもらおうかな。さあ歌えるでしょうか」

楽次「聞いてないよ。その曲でいくの?」

楽次は歌いだす。

コーヒーショップ(昼)

楽次がコーヒーをすすりスマホを見る。

楽次「おせーな。愛理、5分遅刻だ。まあ、女性はそんなものか」

LINEの着信音が鳴る。

楽次「愛理か? なんだ卓二か」

卓二のラインを見る。

楽次「なんだ? お前大変だぞ? この動画みてみろよ? だと?」

楽次はYOUTUBEを見る。苦梅が映っている。

苦梅「しゃくしゃくしゃく。にがうめーおい! 楽次―。楽次見てるか? お前が彼女 といってた愛理ってこの人か?」

愛理はうつむいてしゃべらない。

苦梅「舞い上がって動画映した代償は大きかったな。愛理はうちが預かった。残念な、彼女だな」

楽次「なんだと。愛理なんでそこにいる?」

苦梅「お前の激辛チャレンジなんか嘘っぱちだ。お前なんか原液で5滴もいけるはずが ねえ。そうそう、お前、この彼女返してほしかったら14時10分に西葛西の交番に いけ。いかないなら、お前は愛理をふったとして俺が付き合う」

楽次「なんだと?」

楽次はスマホの時刻を見る。14時5分である。

苦梅「そうそう、お前有名だったな。お前の滑稽な姿見られると思ってギャラリーがた くさんいるかもな! ははは、行くよな?彼女を救いたければ」

楽次「くそ。負けるもんか。愛理は俺っちが守る」

楽次はコーヒー屋を出て交番に走る。

楽次が現場に行くと周りの人に囲まれる。周りは嘲笑っている。

楽次「どこだ?」

交番の人が近づく。

警官「あんたきたの? 来てもらっちゃ困るね。交通が混乱するから早いところ立ちさ ってくれませんかね」

楽次「俺は何も悪いことしてないぞ」

警官「見ましたよ。動画。申し訳ないが、愛理さんの家族及び本人の被害届も、捜索願 いも、拉致された報告もない。彼女は縛られている様子もなく、話してもいない」

楽次「でも預かったと奴は言った」

警官「愛理さんはあなたの妻ですか?」

楽次「昨日、彼女になった」

警官「警察は振った、振られたまで関知しま せんよ。あの動画に愛理さんは映ってましたが動画に映っているだけですね。助けてとか いいましたか。確認の為、電話しましたが自宅にいるそうですよ。そんな状態じゃ、しょっぴけないね」

楽次「そんな・・」

警官「あなたもう少し自分が有名であることを自覚したほうがいい。軽はずみな行動さ れるとこちらとしてもねえ」

周りの人が失笑する。

楽次「よしわかった。俺っちはYOUTUBERだ。笑ってる奴。俺の動画映れば、何 百万人とみるぞ。映りたいか?」

周りがひきはじめる。楽次はスマートフォンで自分の顔を撮り始める。周りは逃げる。

楽次「だ、だ、だ、ひーひー楽次です。さあ今日は西葛西に来ております。なんか雑魚 がここに来てみろというから来てみたが、何もねえな。雑魚は雑魚だな。おい、雑魚 はどこだ?俺っちは逃げも隠れもしねーぞ。俺っちは何とも思わない。だけど彼女は、 自由にしてやれ。・・おい、そこ笑っている奴、映してやろうか? いいか? いき なり見てわからない方は雑魚の苦梅の動画みてくれ。拉致じゃないの? これ? 俺 っちを嫌いな奴は笑ってろ。応援してくれる人はいると信じている。俺っちのチャン ネル登録してくれている仲間、情報が欲しい。これはネタじゃない、リアルに彼女を 助け出す。俺っちの責任だ。簡単に彼女を200万人以上の方に公開してしまった。 さあそこらへんのスマホゲームより面白いぞ。俺っちに賛同してくれ。だ、だ、だ、 ひーひー警官にも呆れられた楽次でした」

楽次は撮り終えるとすぐさま、動画を投稿する。そして場を立去る。

楽次の家(昼)

楽次がスマートフォンでYOUTUBEを見ている。

楽次「奴は出したか? あった。これだ!」

苦梅「しゃくしゃくしゃく、にがうめー。おい! 楽次! みじめなもんだな? 恥さ らしあうのわかってていくか? まさか、愛理に会えとでも思ったか? たわけ」

楽次「愛理がいない」

苦梅「さあ聞け。愛理がいなくて心配とかしてんだろ。俺は拉致なんかしてないぞ。は はは。彼女は彼女の意思で俺の動画に出たんだ。高校の時の同級生だからな。要する にお前は利用されたんだ」

楽次「嘘だ!」

苦梅「彼女はおめえのとこには戻らない。別に結婚した訳じゃなかろう。信じないか。 じゃあ、俺のいうことやってみせろ。明日スナップのファン限定のプラチナライブが オーチャードホールでやる。そこにサプライズゲストで出てみろ サプライズゲストだからな。ちなみに東京ドームを埋め尽くしたグループだ。出来る チケットなんてとれないぜ。おっと、失言。サプライズゲストだからな。チケットとっても無駄だな。そこでサプライズゲ   ストとれたら彼女は戻ってくるかもな。あ あ、勘違いするなよ。これはブラックジョ ークだ。本気にしたら笑いもんだぜ。やらなくていいからな。できやしないだろうけ  ど。もう一回いうぞ。ブラックジョークだ。ネタ。わかる。感謝しろよ。このネタ視聴  数かなりのびてんだ。今度、俺に奢ってくれよ。もう一度いうぞ。これはネタ。彼女 は普通に生活してるぜ。俺の動画に出ただけだぜ。今日が4月1日ということを忘れ るなよ。しゃくしゃくしゃく余裕綽々苦梅 ばあい」

楽次「くそ」

電話がなる。

卓二「おい、楽次、みたか」

楽次「見たぞ。コンチクショウ!」

卓二「どうする気だ?」

楽次「スナップの事務所に電話だ」

卓二「お前、正気か? 無視しろ。だいたいブラックジョークっていってるだろ」

楽次「愛理を自由にしてあげなければならない。俺っちの責任だ」

卓二「お前、落ち着け。愛理は最近会ったんだろ?何考えているかわからんし、彼女も 大人だ。小学生じゃない。お前の動画にでたらどうなるかどうなるかわかっていたはずだ。

楽次「愛理は俺っちにキスしたんだぜ」

卓二「それが何だ?そのくらい簡単にする奴もいる。要するに利用されただけだ」

楽次「利用? 彼女が芸能人になるってことか? そんなわけない」

卓二「今日は4月1日だ。お前、真剣にピエロやって笑われるだけだぞ。無視して動画作れ。愛理は忘れろ」

楽次「仮に愛理が俺っちを利用してもだ、俺っちは実害を受けてる。笑われものだ。ユーチューバー転落したら苦梅訴える」

卓二「苦梅なんてユーチューバーとしては雑魚だろ? 無視しろ。 お前を支持する人はいる」

楽次「お前の忠告はわかった。じゃあな」

卓二「おおい!」

楽次は電話切る。楽次は落ち着かない。

楽次「落ち着け。どうしたらいい? 確かに愛理に利用されたかもしれない。 では無視するのか? そうだ。決めた。

楽次はコーヒーの瓶をテーブルに運ぶ。お湯を沸かす。冷蔵庫から牛乳パック を冷蔵庫から取り出す。大きいボウルを食器棚から出す。鏡を取り出し服装 顔を確かめる。少なめに入れたお湯が沸騰する。火を止めて録画器具をセッ トしてする。大きく深呼吸をする。時間を見る。撮る。

楽次「だ、だ、だ、ひーひー。楽次です。さあ、今日は4月1日、エイプリルフール。 今日はジョーク動画をやりたいと思います。今回は俺っちの彼女、愛理が考えてくれた ネタをやりたいと思います」

楽次は瓶を録画器に近づける。

楽次「それはこのネスカフェゴールドブレンド、これを全部入れて溶かして牛乳を入れ こんで冷まして一気に飲みます」

楽次はコーヒー瓶を開けてボウルに全部開ける。沸騰させたヤカンにお湯を いれていく。

楽次「ああ、どろどろだよ。これこさなあ」

楽次は箸を持ってかきまわす。

楽次「とけたか? 牛乳をいれます。危険だからたくさんいれよう。500mlはいれ るか。うわあ、これ飲むのかよ。いきます」

楽次は一気のみする。

楽次「んぐっ、あえっ、みなさんはマネしないように。うわっ、これすげっ、にがうめー。だっ、だっ、だ、楽次でした」

楽次は急いで動画をアップロードする。その間、パソコンでネットを調べる。

楽次「スナップの事務所は・・メールか?どこかにないか? 104で訊いてみるか」

楽次は電話をかける。

オペレータ「はい、104の平松です」

楽次「スナップと仕事の話がしたいのですが事務所の電話番号を」

オペレータ「一般に公開されている番号はないですね」

楽次「俺っちはどうしても連絡をとらないといけないんだ」

オペレータ「広報部代表事務所の電話番号ならばありますがそれでいいですか」

楽次「お願いします」

オペレータ「ではご案内します。ありがとうございました」

声「お問い合わせの電話番号は」

楽次は電話番号を書きとめ電話する。

楽次「かかるか? かからないか。留守電か」

楽次は汗をぬぐう。

楽次「楽次といいます。YOUTUBERです。明日のスナップのライブでサプライズで出演しなければなりません。 お願いします。誰か対応してくれませんか。俺っちの電話番号は03の6666666です。宜しくお願いします」

楽次は電話を切る。うろうろする。電話がかかってくる。電話をとる。

落合「事務局の落合です。楽次さんですか?」

楽次「かかってきた! そうです。YOUTUBERの楽次です」

落合「動画の件は知っていますよ。いたずら電話が20件あってね」

楽次「暇な奴もいるものだ。俺っちは真剣なのに」

落合「あなたは本物の楽次さんですか?」

楽次「本物です」

落合「身分証明書はありますか」

楽次「免許証ならばある」

落合「住民票はありますか」

楽次「住民票?」

落合「いたずらが多いんでね。住民票も見せてもらう」

楽次「今、3時45分なんで、確か役所は5時までやってるよな」

落合「間に合いそうですか」

楽次「俺っちはやるしかないんだ。とってくればいいんだな」

落合「ではその時間を考慮して夜7時に京葉線にある新浦安駅のオリエンタルホテルの ロビー噴水にある噴水の近くにある椅子に座っていてくれ。時間厳守。1分も待ちません」

楽次「そこなら間に合う。待て、あんたの顔知らないぞ」

落合「携帯番号教えてくれませんか。かけてこちらが確認します」

楽次「わかった。いう。090の99999999だ」

落合「わかりました。会った時に、身分証明書と住民票を提示してください。では」

楽次は電話をきって、急いで外へ出る。

葛西区民館(夕)

楽次は手をふとももにしきりに触りながら椅子に座っている。

事務員「徳島さん、徳島楽次さん」

楽次「はい」

事務員「お待たせいたしました。300円ですね」

楽次「はい」

楽次は焦りながら財布からお金を出す。時間を見る。4時50分をさしている

。 楽次「時間的にはまだ間に合う。でも嘘の人だったら。いやこれしかないんだ」

事務官「はい、確かに。300円いただきました。どうされましたか」

楽次「いや、なんでもない。ありがとう」

楽次は紙を鞄にいれて外に出る。

オリエンタルホテルロビー噴水前(夜)

楽次はそわそわしながら椅子に座り、スマートフォンを見つめる。

楽次「こないかー。これも遊ばれた? 3分前だ」

電話がかかる。

楽次「もしもし」

落合「ああ、君だね」

楽次「どこだ?」

落合が楽次に近づく。楽次が気づく。楽次は電話を切る。

落合「どうした? スナップがくると思ったのか?」

楽次「いや、それは思わない。俺は今の状態をなんとかしたいと思うだけだ」

落合「では、身分証明書と住民票をみせていただこうか」

楽次は免許証と住民票を渡す。

落合「そっくりさんのいたずらもあるのでね持ってきてもらった」

落合はまじまじと、書類と楽次の顔を見る。

楽次「いたずらに見えるか?」

落合「いや、信用しよう。話をしようじゃないか。ついてきてくれ」

落合と楽次はエレベータに乗る。

落合「いくつか動画をみさせてもらったが、あんな辛いもの食べて平気なのか」

楽次「俺っちはこれで食べていってるんで。仕事がYOUTUBERだから」

落合「面白い人だな」

楽次「どこにいくんだい?」

落合「細かい話はあとで」

2人はエレベータを降りる。落合は携帯を取り出し、電話をする。

落合「私だ、連れてきたぞ」

名取信二(39)がドアを開ける。

楽次「な、名取さん?」

名取「おーきたか。一度会ってみたかったんだよねーざ・ソースみたぜ。あの辛いのよ くいったな。すげーよ。あれは俺には無理」

楽次「本当ですか。見てくださっているんですか?」

名取「俺はこういうの結構好きで隠れて見てたりするんだよねー」

楽次「俺っち、嬉しいです」

名取「あれも見たよ。あの宣戦布告みたいな やつ。名前忘れたけど。売名行為だよ。あんなの。こつこつやってるやつ応援したいねー。俺なんかは」

楽次「ありがとうございます」

名取「で、彼女を拉致されたんだって? できたばっかりの彼女だから、彼女の真意は わからないけど、お前の行動は評価したい」

楽次「俺っちはどうしたらいい?」

名取「明日、オーチャードでライブあるから今日ともに過ごして明日に備えよう」

楽次「助かります」

名取「悪いけど、サプライズゲストの件、ライブの冒頭でやらして。この事件知らない人もいるだろうから」

楽次「従います」

名取「冒頭でうちらスナップ5人が登場してそのまま。だっだっだ、と楽次が登場して もらう。そして一件落着したところで、お前の曲、欠けた月を歌ってもらう」

楽次「え?なんで俺っちの曲知っているんですか?」

名取「聴いたことあるよ。お前の楽曲。音楽の路線もうやらないのか? いいと思うんだが」

楽次「それメンバーにも言われました」

名取「お前に1曲歌わしてやるよ。5分やる」

楽次「俺っち、スナップに今までファンではなかったけど、惚れました。嬉しいです」

2人は握手をする。

名取「明日、なぎに公開動画撮ってもらうからその動画アップしたるよ」

楽次「おおお!、ありがとうございます」

名取「詳しい話はまた後で。飯。何がくいたい?ここに持ってきてもらおう」

楽次「いや、本当に嬉しいんですけど、さっき大量にコーヒーのんで胃が尋常じゃなくいたいんです」

名取「あははは。それも見た。胃薬やろうかたぶんこんなんじゃ効かないだろうけど」

楽次「ありがとうございます」

名取「落合さん、あっちの件も頼む」

落合「了解」

落合は部屋を出る。

名取「じゃ、なんか食べようぜ」

楽次「はい」

オーチャードホール(夜)

2500人のファンがスナップと登場を待っている。スナップが現れる。メンバーのなぎがビデオをもっている。

名取「スナップ参上!」

会場は大声援が起こる。なぎが撮る。楽次が袖裏から、登場する。

楽次「だ、だ、だ、ひーひー楽次です」

会場がざわつく。

名取「楽次さん、知ってる人手あげて」

会場の半数が手を挙げる。

名取「なんかさあ、どこかのバカな奴が、このライブのサプライズゲストに楽次がでな いと彼女が戻ってこないんだって。だから助けてやろうと思ってさ」

会場は大歓声がおこる。

名取「俺は楽次を支持する」

会場が拍手をする。

名取「今から、楽次が1曲自分のオリジナル曲を歌います。バンドメンバーが急いで練  習してくれました。

楽次「ありがとうございます」

袖裏から愛理が登場する。

楽次「愛理! なんでここに?」

愛理「ごめんなさい。こんなに騒ぎになると思わなくて。でも話題性でるかなと思って 苦梅の動画に出ました。断れませんでした」

楽次「そうか」

愛理「結婚してください」

楽次「はああ??」

名取「おいしいね。お前ら。今なぎが撮っているからよ。じゃ歌ってもらおうか。欠けた月を。スナップも歌うから」

会場は大歓声が起こる。欠けた月を歌う。

楽次の自宅(昼)

楽次はベットに横たわっている。ドアフォンが鳴る。ゆっくりと起きる。 卓二が立っている。どんどん音がする。楽次はドアを開ける。

楽次「卓二か」

卓二「お前の勝ちだな」

楽次「何が?」

卓二「お前が出演したスナップのオフィシャル動画1000万回超えてるぞ」

楽次「まじでか」

楽次は慌てて、ネットを繋げる。

楽次「やばい。なふートップで話題が載ってる」

ドアフォンが鳴る。なり続ける。

楽次「なんだこれは?」

卓二「マスコミだな。これは外にでれないな」

楽次がドアフォンのカメラ覗くと、報道人がつめかけている。声がする。

声「楽次さん、いるんでしょ?楽次さん」

声「楽次さん、公開プロポーズ受けた感想」

声「スナップに出演してどうでした?」

楽次「俺は犯罪者か? ははは」

卓二「なあ、バンド再開しないか」

楽次「俺もそれを考えていたところだ」

卓二「よし決まった。このうるさいの落ち着いたら始めよう。それと愛理も呼べば?」

楽次「そうだな」

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