55歳~シンビジウム(創作)
55歳~シンビジウム(創作)
シーン1 アリオ
典明はトジマ電気の近くに
ある椅子に座り、ボードに
紙を新しくつけて何か書いている。女性が近づく
愛理 毎日、暑いですね。こんなに暑いとこういうとこにいついちゃうわ
典明 暑いねえ。この時代避暑地もなんか行きづらいからここが避暑地だね。
愛理 ふふっ。あたしも暇になっちゃってね。2日にいっぺんの午後はここにきてるわ。
典明 おたくは何の仕事してんの?
愛理 音楽の講師よ。4月、
5月と休業して。6月から、
オンライン個人レッスン
しているわ。通勤時間ないのと、4月、5月で半分生徒さん、やめちゃってね。週3
休みになったわ。9月から
少し、学校での授業はじまるけどまだわからないわね
典明 あんたも大変だな。俺は5月の早期退職者だよ。
早く決めてよかったよ。まだ、退職金でたからな。今
あそこは大変なことになってる。倒産するかもな。倒産したら退職金も怪しいからな。
愛理 お父さん、仕事しなきゃ。ここで涼んでばかり
いると、奥さん、怒るんじゃない?
典明 俺は独身だよ。仕事仕事できちゃってな。夜中とかもよく仕事してたし、
家庭には向かない人生だったな
愛理 え?そうなの?独身貴族?
典明 あまり豪遊はしねえな。今、そんな時代じゃねえし。
愛理 え?女遊びも?
典明 ん?あんた誰だ?
愛理 あ、ごめんごめん。ツッコミすぎたね。あたしはただのおばさん。気にしないで。
典明 まあ、いい。仕事にあけくれていたら、女とか
めんどくさくてな。仕事してまれにいい食事して、そんな人生さ。
愛理 趣味は?
典明 趣味もなかったからなあ、金かからない趣味は
ないかな?と想って、最初クロスワードやってたけど
なんか、自由に考えたくて
作詞をはじめた
愛理 作詞?いいじゃない
それがそう?
典明 ああ。
愛理 見せて
典明は見せる
愛理 ああ、これは詩だね
典明 ああ?
愛理 作詞というから、歌詞かなと思ったけど、詩なのね。
典明 歌詞?なにが違う?
愛理 歌詞は歌えるものだから。これいいね。歌詞に
したら?
典明 ああ?
愛理 できたらあたしが作曲してあげるよ
典明 ははーん、なるほど、なんでいきなり話かけてきたのかと思ったら、
音楽教室の営業か。いらないよ。お疲れ様。
愛理 あ、いやいや、お金はいいよ。あたしも娘が結婚して自立したから。
蓄えが減らない程度の仕事でいいのよ。
典明 あ?娘さんが結婚?
あんたいくつ?
愛理 年きくのお?
典明 あ、いや失礼。若いなあんたさん。ご亭主が、
僻むじゃないか。こんな知らんじいさんと話してたら
愛理 あたしはシングルマザー。バツイチだよ。もう
15年シングルマザーだよ。
典明 それは失礼した。
愛理 まあ、あたしも、もうどうでもいい感じ。
典明 ほおー
愛理 実は、先月から、あなたここでなんかやってる
の知ってて
典明 顔になってたからな
何も買わねえ客
愛理 あたしも作詞するとき、ファミレスやこういうとこきて、紙に書いてる
典明 ほう、そうそう、スマホで書くのは合わなくてな。
仕事のときはパソコンやスマホよく使ってたが、
作詞は俯瞰でとらえたくてな
愛理 なんか気になっちゃってね
典明 そうなんか
愛理 それ、歌詞にしてみたら?
典明 やりかたしらん。
愛理 一番いいたいことを
さびで書いて、文字数を1
番と2番であわせればいいだけ。
典明 なるほど。
愛理 じゃあね。またくるわ。
典明 おい、あんたまたくるんか?
愛理 毎日そこにいるでしょ?
典明 ああ。
シーン2 アリオ
典明はそわそわしてる。
それを見ながら愛理は近づく
愛理 落ち着かないね。どうした?
典明 あ、いや、あんた、
5日来なかったから。もう、
こねえのかと思ってたよ
愛理 あはは。仕事で女遊びしなかった人が、あたしを待ってたの?
典明 待ってはいねえよ。
ただ、その気になって作詞しちゃったから、無駄にしたくないだけだ。
無駄な仕事したくないからな。
愛理 仕事じゃないじゃん。まあ、仕方ないか、仕事仕事できたひとなんしょ?
典明 これは仕事だ。人生初のオレの曲になるからな
愛理 歌詞みせて。
典明 あいよ
愛理 。。あ、いいじゃん
ある意味新鮮。題名が早期退職者の次の扉。面白い。
あたしにはかけんわ。。。
あはは、あたし登場してんじゃん。なんかあたしに、
期待してんの?
典明 してないよ。曲になるなら、そんな作詞になっただけだ。
愛理 あっそう。
典明 で、作ってくれんのか?
愛理 そうだね。この詞ならなんとかなるよ。
じゃ、ついてきて。
典明 あ?どこへ?
愛理 曲にすんでしょ?リアルタイムに作曲してんの
聞かないと好きな曲かわからんでしょ。うちの家へいくよ
典明 いいのか?どこの馬の骨だかわからんぞ、自分
愛理 あ、あたし職業がら
たくさんのひとにあってる。あなたは大丈夫だと思うけど。あたしも失うもん
ないし
典明 なんか、うまくあんたのペースに乗せられたようだ。お手柔らかに頼むよ
あんた名前は。
愛理 えりよ。あなたは。
典明 のりあきってんだ。
愛理 歌詞のとおり、仕事はほどほどに金かからない
趣味はしるの?
典明 そうだな。人生は一度しかない。仕事仕事できたから、最初の一ヶ月は、
呆然としてたが。ボケてしまうと思って、頭の体操はじめたのがきっかけ。
愛理 恋愛は?
典明 55にもなって、相談所とかいって、ああ、面倒くさい。金もかかりそうだし。
ああ、あんたならいいよ。なんか気を使わなくてよさそうだ。
愛理 あはは。今は遠慮しとくは。
典明 早速、ふられちまったよ。まあ、いい。曲できるならな。
愛理 ついたよ。
典明 結構近いな。
愛理 近いからアリオにいってるのよ。
玄関前で一人の男が近づく
智洋 なあ、愛理
愛理 とも?
智洋 久しぶりだな
愛理 よくここわかったね
智洋 順子も結婚したし、そろそろうちらも戻っても
いいと思うんだよね
愛理 それ昔不倫してたあなたがいうこと?
智洋 もうはるか遠い過去だよ。
愛理 それもあなたがいうこと?
智洋 過去は清算できたと
思うんだよね
愛理 都合のいい解釈ばっかしてるんじゃないよ。離婚の原因はなんでしたっけ?
3人も不倫して。あたしは修復は生涯不可能と思うけど。
智洋 可能だと思うよ。オレも60だし、遊ぶ年でもないし。
愛理 あなたはいつも自分本位しか考えでしかないのね。私の気持ちが大事なのではないの?
智洋 気持ちはあとからついてくる。
愛理 アホじゃないの?
智洋 んっ?その男は誰だ?お前こそ、年考えず、
男とっかえひっかえ、やっているのか?
愛理 違うわよ!
典明 横から悪いが、あんたが、愛理さんの元夫か?
智洋 あん?
典明 自分本位な考え。あまり仕事もできなそうだな
智洋 なんだと?
典明 仕事できなくて、女にだらしない。あんたは一番嫌いなタイプだな
智洋 あん?ゆきずり男は
だまってろ。
愛理 ゆきずりじゃないわ。真剣に付き合ってるわ
智洋 だらしない女だ。まあ、一時的な過ちなら許してやる。オレと暮らそう。
愛理 あなたの不倫と、私の純愛一緒にしないで。
典明 嫌がってんだから、
帰れってんだ!愛理さんは
あんたの選択肢はない。
智洋 なぐられたいか?
典明 なぐりたければなぐればいい。
智洋は典明をこずく。
典明 仕事できない奴は、頭悪いから、暴力しかできん。まあ、私なら首にするが。
智洋 くわっ!またくるからな。
智洋は去る。
愛理 ごめんなさい。こんな目にあわせてしまって。
典明 いや、久々に心がおきたよ。刺激が最近なかったからな。でも、うちら付き合ってた?
愛理 いや、売り言葉に買い言葉で。
典明 いいやさ。愛理さんも大変だな。何故、自分に
近づいてきたか今でもわからんけど、悪いひとじゃなさそうだ。なんか、
安心した。曲も少し金払うよ。なんか悪いし。
愛理 すみません
典明 でもあの男はやめた
ほうがいいな。
愛理 そうなんとか撃退したい
典明 ああ、私にいい案がある。
愛理 何?
典明 私は現役時代、会社の特命係やってたことあって。まあ、会社の不正して
いる社員の監査やっていた
こともあり、探偵のつても
あるんだよね。元夫の写真とか情報とかある?
愛理 あるけど、どうするの?
典明 あの男の都合悪い、
行いを撮るのさ。ああいう
男は不倫は治らない。
愛理 いいね
典明 情があったりするか?
愛理 全然ない。
典明 じゃあ決まりだ。まず、部屋にあがってから、
情報もらうか。
シーン3 愛理の部屋
典明はスマホをいじる。
典明 あ、ひろくん。ライン送ったよ。その男が、女と遊んでいないか、あと、
面白いこと言ってないか、
宜しく。代金はペイパルで
振り込んでおく。じゃ。
愛理 すみません。お金払うんで。
典明 あ、いーい、愛理さんは作曲を頼むよ。それで
相殺だ。
愛理 あたしは音楽でしか
返せない。か。よく自分でもいってたは。
典明 さあ、作曲タイムだ。すごいなグランドピアノというやつか?
愛理 いつもはキーボードだけどたまにピアノ弾きたくなるのよ。どんな感じの
曲にしたい?
典明 よーわからんけど、
元気がでるやつがいいな。
未来が開けるようなやつ。
愛理 あいあいさー。
シーン4 5日後 愛理の家
典明は紙を持って歌う。愛理は伴奏を弾いている。
愛理 どう?感触は?
典明 やあ、最高だよ。本当に曲ができるとは。しかも歌うなんてな、自分が。
愛理さん、すげーな。
愛理 まあ、長くやっているからね。
典明 よしわかった。飯ご馳走するよ。日本橋に、
きよがわという、うまい、うなぎ屋があるんだ。いかねえか。
愛理 ほんとう?ご馳走さま。外食久しぶり。アリオの外食はよくいってるけど
、そういうのは久しぶりだわ
愛理と典明は玄関を開ける。近くでタバコ吸ってた
智洋が近づく
智洋 またお前か
典明 それはこちらのセリフだが。あー。そういや、
最高のタイミングだよ。
智洋 何がだ?
典明 予想以上にくそみたいな奴だったから徹底的に
やるぞ。
智洋 だから何がだ?
典明はスマホを智洋に見せる
智洋 美咲?なんでお前が
こんな写真もってる?
典明 悪いが知り合いに探偵がいてな。調べさしてもらった
智洋 ああ?探偵?オレは
今独身だぞ?不倫とかでも
ない。訴えるぞ。
典明 確かに、不倫ではない。だが、復縁をする姿勢ではいな
智洋 お前の知ったこっちゃないだろう!
典明 いや、現在の愛理さんの連れとしては黙っては
おれんな。
智洋 ああ?こんだほんとにやんぞ。
典明 まあ、これをきけや。いや、うちの調査員は
優秀でな。まあ、これ聞けや。
典明はスマホを操作して、
音声再生する。
智洋 美咲。オレにいい案がある。オレには15年前、
離婚した愛理という奴がいる。こいつと復縁する
美咲 復縁?あたしはどうなるのよ?
智洋 まあ、聞けや。こいつは結構、金もってる。5000万ぐらいな。
偽装復縁して、キャッシュをつかんだところで、お前連れて失踪するんだ。
美咲 5000万?結構遊べるね。
智洋 いいだろ、ちょっと
まってろや。はやいとこ、
いい生活しようぜ
美咲 楽しみにしてるわ。
典明はスマホの再生止める
愛理 ほおー。残念ね。あたし今、そんなに金ないよ。5000万?それ15年前の
話しょ
智洋 貴様、どこでそんな
盗聴を!
典明 まあ今、復縁してなくてもこれは普通に犯罪だな。
智洋はナイフを出す。
典明 ほう。ナイフですか
?頭使えないから暴力ですか
智洋 黙れ!
典明はすばやく智洋の手を
蹴る。ナイフは地面に転がる
典明 今なら、ナイフだしたことは忘れてやる。
ぶた箱はいきたくないだろ、だが、愛理にはもう一生近づくな。
智洋 くそがあ!
智洋はナイフ拾う。
典明 いっとくが、今の一部始終、探偵が写真とってる。いいのか?警察にだしても
智洋 ぐああ!
智洋は走り去る
愛理 警察に突き出しても
よかったのに
典明 探偵も少しグレーでな。このくらいでちょうど
いい。まあ、今の写真もとらえたしな、
愛理 どこ?
典明はスマホで電話する
典明 ひろくん、今の現場写真もあとでおくって。
ひろ 今送れます
典明 宜しく
典明は電話きる
典明 お、きたきた。これね。あとで、全部、転送するからお守りにして
愛理 典明さん、何者?
典明 昔は探偵事務所にいた。40代から、ある大会社の特命係になった、
仕事人間だよ。まあ、仕事がら、
危険伴うから、家庭も作らなかったのもある。さっ、
うなぎ食べにいこう。つまんないこと忘れて
愛理 うん。
愛理は典明の手を握る
典明 オイオイ。自分そういうの慣れてないんだよ。
いい年なんだからさ。
愛理 ずっと一緒にいたいかも。ねえ、音楽教室独立して一緒にやらない?
典明 自分は音楽土素人だぞ。
愛理 それでもいいの
典明 うなぎ食べながら話そうか
愛理 うふふ。